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2005年1月27日 (木)

ルル事件の背景・4(しのぶしのばず)

20050127shinobazunoikeJP佐藤しのぶさんはあの紅白歌合戦にも4年連続で出場した、国民的アイドル・オペラ歌手です。デビュー時はうるおいと輝きをかねそなえた素晴らしい声で、これからの日本のオペラ界を背負って立ってくれるものと期待されていました。

そんな日本で最も有名なプリマドンナである佐藤しのぶさんが、ルル役にキャスティングされて、全オペラ・ファンが(ちょっと大げさか)驚愕した理由とは何なのでしょうか?

まず声の問題があります。この十年かあるいはそれ以上になるでしょうか、しのぶさんはあのみずみずしい声が失われてしまったような気配で、多くの人に心配されています。女性歌手が出産を契機に声の質が変わってしまうということは、結構あるらしいので、私は彼女も出産が原因だったのではないかと考えていました(時期的にわりと合うので)。しかし出産直後は素晴らしかったという証言もあるので、どうも関係ないみたいです。いずれにせよルルのようなハードな役が今の彼女の声で歌えるのか?という疑問がまず第一にあります。

またこの頃からじゃないかと思いますが、ヴィブラート過多と言葉の発音の不明瞭さについて、いろいろと批判の声を耳にするようになりました。
ルルのような役を歌うには、致命的といってもよい障害になりかねません。

そして何よりもルルを歌うにあたっては、はたして「背景・1」で述べたような難関をクリアできるだけの音楽的能力を彼女は持っているのかというのが、問題になります。こうした役柄に適性をしめしたことがないので、かなりの不安材料になっているわけです。(たしか昔、若杉さんとN響定期でベルクの何かを歌ったような気がするのですが、なんだかおぼろげな記憶しかありません。)

佐藤しのぶさんのレパートリーの中心になるのはイタリア・オペラで、特に「椿姫」と「蝶々夫人」は得意の役柄です。ミラノ留学経験があるので当然と言うべきでしょう。しかしドイツ・オペラが得意だと言う話は聞いたことがありません。

イタリア・オペラというのは言葉と旋律の関係がゆるく、母音が多いイタリア語の明るい響きをちゃんと出せれば、歌詞が聞き取れるかどうかなどということはさして重要ではありません(と私は思う)。しかしワグナー以後のドイツ・オペラ、特にR・シュトラウスとベルクは、言葉と旋律の関係が極めて密で、クリアーなドイツ語で誰にも聞き取れるように発音するというのは非常に重要です。まして歌詞の解釈ということになれば、ちょっと大学でドイツ語をやりました程度では、とても歯が立たないのです。

実際、新国が開場して最初のシーズンに、R・シュトラウスの「アラベラ」が上演されることになり、しのぶさんが主役にキャストされていたのですが、賢明にもキャンセルしています。

私は今回のルルもどうせキャンセルだろうとふんでいました。「こうもり」のロザリンデのような役になら向いているグランド・マナーの演技をする彼女が、ルル役に対しておそらく求められるであろうリアルな演技(もちろん演出家次第ですが)を出来るのかという心配もありました。

なにからなにまで佐藤しのぶには向かない役、それこそがまさにルルだったのです。

以上で事件の背景については終わります。次は事件そのものの概要について、明日かもしくは明後日に書きたいと思います。(明日か明後日に続く)

写真は東京・上野の不忍池。素材は同じくフリーのものを使わせていただきました。

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コメント

私の佐藤しのぶさん体験を。
*いつごろ知ったのか記憶にないんですけど、お名前だけは知ってました。
*某レコード屋さんで、彼女の椿姫のLDを手に「美人じゃのう・・・」とつぶやいて、レジへ持っていったおじさんに出会いました^^。
*バリトンのミルンズ目当てのお友だちにつきあって、スロヴァキア・オペラの「トスカ」に行きました。ヒロイン役が彼女でした。テノールはドヴォルスキー。ロビーには彼女の後援会の受付?があってにぎやかでした。
*新国立劇場「ホフマン物語」のジュリエッタ役でした。
2度の舞台、「日本で最も有名なプリマドンナ」にしては、不思議と、影が薄いというか、強烈なオーラは感じませんでした。
紅白歌合戦で見た(聴いた)ことがあるのかないのか、全然記憶にありませんーー;

投稿: edc | 2005年1月27日 (木) 10:24

あらら、週刊新潮に出たようですね!(読んでませんが)

私の佐藤しのぶさん体験は、生舞台は「ホフマン物語」のジュリエッタ。
ほとんど歌わないバージョンだったようで、どんなだったか覚えてません。
数年前のニューイヤーコンサートっていうんですか、あれで歌ったすぐあとにマイクをつきつけられて、取り組みが終わった直後のお相撲さん状態で、息があがって声がでなくて、ハーハーしていたのが印象的でしたね。
オペラ歌手のくせにどうなってるのかな?とおもいました。一曲歌っただけですよ、しかも動かないで。

投稿: | 2005年1月27日 (木) 20:05

上のコメントkeyakiです。

投稿: keyaki | 2005年1月27日 (木) 21:22

>euridiceさん

LDというとアラーニャとのやつですね。もうアラーニャは手の届かないところにいってしまいましたね。
紅白では「マイ・フェア・レディ」のイライザ(風)の衣裳で「ウエスト・サイド物語」の曲を歌っていたのが記憶にあります。多分バーンスタインが亡くなった年だと思うんですが。

>keyakiさん

おやおや新潮でちゃったんですか。公演すむまで待ってればいいのに。2幕版の成果については、実際に見るまではどんな結果になるか、分からないんだから。
そうそうスタミナも3幕版で心配されてたことの一つなんですよね。まあ、2幕版だって大変だと思うけれども。

投稿: TARO | 2005年1月28日 (金) 00:43

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