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2005年2月19日 (土)

ローマの休日Roman Holiday

20050219RomaJP「ローマの休日」英語題名の直訳ですが、原題はHoliday in Rome ではなくRoman Holidayです。
あまりにも有名なこの映画は1953年の作品。アメリカ映画界を代表する巨匠だったウィリアム・ワイラーが赤狩り旋風の吹き荒れるハリウッドに嫌気が差し(と言われている)、イタリアに渡って作った作品です。脚本は赤狩りでハリウッドを追われたダルトン・トランボが書いたものですが、別人の名前で発表されました。この作品はアカデミー賞のオリジナル脚本賞を受賞しましたが、その別人が受賞。3年後のアカデミー賞でもトランボは「黒い牡牛」で受賞しましたが、偽名で発表していたため、それがばれないようトランボは欠席。受賞者の名前(偽名の)が呼ばれても、誰も壇上にあがってこなかったというエピソードは有名です。

この作品は映画史上に残る傑作ですが、そうした多くの作品がそうであるように、この映画も複数のテーマが縦糸・横糸を織り成して作り上げられています。

縦糸にあたるのは、ヘップバーン演じる王女の成長の物語。たった一日のローマの休日の体験で、公式の席であくびをもらしそうになり、靴をドレスの中で脱いでいる王女が、自分の責務を自覚したしっかりとした大人の女性へと変わります。その成長していく姿が縦糸です。

ご承知のように、ヨーロッパには「教養小説」という伝統があります。日本語では教養小説と訳されてしまうので、すごく変な感じがしますが、主人公の成長過程を追った小説のこと。ドイツ語ではBildungsroman(ビルドゥングスロマン)といいます。
「ローマの休日」はたった一日の出来事を描いてはいますが、大人への脱皮を描くと言う意味において、ビルドゥングスロマンの伝統をささやかに、しかしちゃんと受け継いでいるのです。

もう一つ作品の横糸をなすテーマは、これこそが最も重要なテーマなのですが、『人が人を信頼することの美しさ』です。最初はただの特ダネ狙いで近づいていった記者の心理の変化が、最初は窮屈な生活に対する焦燥と、子供っぽい好奇心で街にでた王女の心理の変化が、ローマの名所を次々と取り入れながらの楽しいエピソードの積み重ねで、きめ細かに描かれていきます。そして最後に静かな感動を与えるエンディングへと収束させる脚本の技。ワイラーの演出力もさることながら、トランボの上手さには脱帽せざるをえません。
製作から50年以上たつのに、いまだに人々から愛されているのは、決してヘップバーンの美しさによるものだけではないのです。

※トランボの部分、一部書き直しました。

写真:ローマ。ごく普通の街角に、なにげに遺跡がゴロゴロ。

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コメント

この映画に関する「解説」はじめて読みました^^
なるほど、なるほど・・・
邦題、ちょっと誤解を招くかもしれない・・と言って、原題を生かしてもっといいのもなかなか難しそうだし。いっそ、オペラ風に、この王女さまの名前にしたらどうだったかしら? ところで、名前ありましたっけ?

投稿: edc | 2005年2月19日 (土) 08:07

アン王女ですね。この映画の主役の一人(?)はローマの街でもあるので、やはり「ローマの休日」でいいんだろうと思います。

確かにあまりにも有名すぎる映画で、いまさら「解説」めいたことを書く人なんか、誰もいないわけですが、この映画に関する突っ込む気にもならないほど、ひどい意見を目にしてしまったので、なんか一言書きたいなと思って。

投稿: TARO | 2005年2月19日 (土) 14:09

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