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2005年6月25日 (土)

ヨブの哀歌~名画と名曲・19

20050625オルランド・ディ・ラッソの「聖ペテロの涙」については、前に書きました。初めてきいたラッソの作品でしたが、とても美しく感動的。で、同じ仏ハルモニア・ムンディからシリーズのようにして発売されたのが、ラッソの「ヨブの哀歌」でした。

当然期待して買って聞いてみましたが、ん~・・・。なにか「聖ペテロの涙」のような感動は得られず。ただ高校か大学時代の話なので、今ならもっと違うきき方ができるかもしれません。

聖ヨブはご承知のように聖書の登場人物で、神からあらゆる虐待を受けても信仰を失わなかったという、Mの鑑のような人。キリスト教徒もしくはユダヤ教徒の人が、どう考えているのか知りませんが、私にはあまりよく理解できない挿話です。

ヨブについての音楽は、ラッソの「ヨブの哀歌」以外に、良く知られている曲は無いと思いますが、絵画はきっとそれなりの数があるんじゃないかと思います。
中でも有名なのはジョヴァンニ・ベッリーニの「聖ヨブの祭壇画」、ヴェネツィアのアカデミア美術館にあります。

20050625この人がヨブで、悲壮感漂うというよりは、栄養の行き届いたムチムチ爺さんに見えるのはいかにしたことでしょうか。注目したいのは顔で、晩年のバーンスタインに似ているような気がしませんか?

ジョヴァンニ・ベッリーニは1420年代か30年代に生まれ、1516年に亡くなったヴェネツィア派の画家。西洋美術史上最も重要な画家の一人ですが、日本ではどうも美術に興味のある人以外からはあまり関心をもたれてないような気がします。どの盤か忘れましたが、ペルゴレージの「スターバト・マーテル」のジャケットに、ミラノのブレラ美術館にある「ピエタ」が使われていたような、淡い記憶が。

200506252中央の聖母の顔も、誰かに似ているような気がするのですが、誰かわかりません。ジェヌヴィエーヴ・ビュジョルドをふっくらさせたような。なんかこんな顔の女優さんがいたような気がするのですが・・・

聖ヨブはイタリア語では「サン・ジョッベ」となります。この作品が「聖ヨブの祭壇画」と呼ばれるのは、もともとはサン・ジョッベ聖堂に置かれていたからで、礼拝堂の祭壇画なので当然大きく、高さは4メートル70センチという巨大なものです。1487年ごろの作品と見られています。

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コメント

>私にはあまりよく理解できない挿話です。
同じくです。もっとも理解できないというか、共感できない挿話のひとつです。聞くたびにいらいらしました^^; 

>「聖ヨブの祭壇画」
おっしゃる通りですねぇ〜思わず笑ってしまいました。この辺にヨブ記の真相を・・そこはかとなく感じるような・・・何と言うか・・(もぞもぞ〜〜〜)

投稿: edc | 2005年6月25日 (土) 23:50

おっしゃるとおり、残念なことに、日本ではジョヴァンニ・ベッ
リーニ、ちょっと冷遇されているような感じですね。私、大好き
です。リミニのクリスト・モルトもいいけれど、絵画としていち
ばん好きなのは、サン・ザッカリーアの聖会話でしょうか。ここ
にあげていらっしゃるサン・ジョッベの祭壇画、アッカデミアで
実物を初めて観た時は、その大きさに驚いてしまいました。まあ
その後、ペーザロの祭壇画でも結構その大きさに圧倒されましたが。

ヨブをテーマにした音楽というと、ダッラピッコラのオペラとい
うよりオラトリオといったほうがいいJobがありますね。去年は生
誕100年ということで、ネット・ラジオで二度ほど聴く機会があり
ました。

投稿: Bowles | 2005年6月26日 (日) 02:53

私も初めてきちんと聴いたラッソは、高校か大学生の頃廉価盤シリーズで出たプロ・カンツィオーネ・アンティカの「5声のレクイエム」だったと記憶します。皆川さんお薦めだったような…。生では80年代終わりにヘレヴェッヘで聴いた「エレミア哀歌」が唯一の気がします。この天才的合唱指揮者は、その後オケの指揮に執心して(遂にモノにならなかったような…、チェリビダッケに習ってもねぇ)中世・ルネサンス音楽は止めてしまった様ですが。「このレパートリーは特別な知識・勉強を要するから」という彼の説明は尤もですけれど。ジョスカンとラッソはやはりルネサンス音楽中一頭抜けていると思います。
小生、ヴェネチア派は今ひとつ苦手で、この祭壇画もまず巨大さがピンと来ませんでした。聖人達の配置も、いかにも子供がクリスマス飾りに出来合いの人形を並べたみたいな…。彼がこの作品を描く時参考にした可能性もあるというピエロ・デッラ・フランチェスカのブレラの「モンテフェルトロ祭壇画」の不思議な空間構成をつい思い浮かべてしまいます。ウフィッツィの「聖なるアレゴリー」やカポディモンテの「キリストの変容」他以下に挙げるのものはやはり傑作と思いますが。
爺さんを描かせても、デューラーが見た可能性が高いと言う「フラーリ祭壇画」では見事だと思いますが、この「ビュジョルド聖母」の他、晩年のヴィーンの「化粧する女」とか、アカデミアの「聖母と2聖女」の可愛いらしいマッダレーナとかふっくらした女性をホンワカした筆致で欠いたものは大好きです。ブレラの「ピエタ」みたいに初期のマンテーニャの影響が顕著な筆線のきついものは、ちょっと不得手です。あとアカデミアの通常「Vanitas」とされる寓意画で、胸が小さく腹が膨らんだまるで「北方的」な女性裸像を描いているのに興味を引かれます(K・クラークが『ザ・ヌード』で触れています)。随分色んな趣味と技法を持ってた人みたいですね。

投稿: 助六 | 2005年6月26日 (日) 07:18

euridiceさん

あ、そうですね。理解できないというより、イライラすると書いたほうが、良かったかも。
欧米の人は、こんな宗教ヤダ!とか思わないのでしょうかねぇ?

>この辺にヨブ記の真相を・・そこはかとなく感じるような・・・何と言うか・・(もぞもぞ〜〜〜)

わ。ミッション系出身とは思えないご発言!(笑

投稿: TARO | 2005年6月26日 (日) 10:16

Bowlesさん、お久しぶりです。

私もベッリーニ大好きなんです。(関係ありませんが作曲家のベッリーニも大好きです。)
サン・ザッカリーアの聖会話は、美しいですね。人物の配置に加え、特に色彩の妙が、単なる静謐さだけでなく、そこはかとない憂愁をも感じさせてくれるような気がします。

この聖ヨブの祭壇画は、聖母子の下の三人の奏楽の天使が特に好きです。

>ヨブをテーマにした音楽というと、ダッラピッコラのオペラというよりオラトリオといったほうがいいJobがありますね。

ダッラピッコラにそんなオペラ(オラトリオ)があったのですか。このへん不得意分野なので、知りませんでしたが、聞いてみたいような、ちょっとキツイような・・・

投稿: TARO | 2005年6月26日 (日) 10:31

助六さん

そうなんですか。ヴェネツィア派が苦手な方っていらっしゃるんですねぇ・・・
昔、聖なる愚意のイコノロジーに挑戦してみようかと考えたこともありましたが、もちろんすぐに無謀な企てということを自覚しました。

ところでこの「ビュジョルド聖母」で、私が注目したいのは、なんといってもこの二重顎。
ジョヴァンニ・ベッリーニの描く聖母は、『割れてとんがった顎系』と『ふっくら二重顎系』とあると思いますが、ここまで堂々とした二重顎も珍しいような。

マンテーニャの影響が見られる初期の作品も、私はわりと好きなんです。うまく説明できないんですが、なにか倒錯的な感じがするんですね。で、それはそれで魅力的というか。

投稿: TARO | 2005年6月26日 (日) 10:45

TAROさん、こんにちは。
ベッリーニ関係でしつこく(!!)またコメントさせていただきます。

私もヴェネツィア派はジョヴァンニ、またはせいぜいジョルジョーネ
までが許容範囲で、圧倒的に好きなのはクァトロチェントなのです。
(あっ、ティエーポロのごくごく一部の変態的なのも好きですが。)
いろいろまわりみちをしてきて、最近やっと気づいたのは、パドヴァ
のスクァルチョーネ工房にオリジンを持つ画家たちが圧倒的に自分の
好みなのだ、ということです。マンテーニャはもちろん、ジョヴァンニ、
ゾッポ、クリヴェッリ、そしてフェッラーラ派にいたるまでの好み、
これで無事(?)説明がつきます。

>昔、聖なる愚意のイコノロジーに挑戦してみようかと考えたこともありましたが、もちろんすぐに無謀な企てということを自覚しました。

聖なる会話にもサン・ジョッベが描かれていますね。
謎解きが盛んなこの絵、とあるサークルでの、横位置のナラティヴ
的画面のなかに置いた聖会話のひとつの試み、と見ることはできない
だろうか、と思う今日この頃...。あくまで夢想で裏付けはありませんが。

ダッラピッコラのJob、合唱がメインの30分ほどの曲です。
ダッラピッコラの作品の中でも歌ものは、イタリアらしい歌ごころ
が全編に感じられて、美しいと思います。この曲、フェニーチェでの
Il prigionieroのカップリングの録音がMONDO MUSICAから出ている
のですが、どういうわけか、ジャケットにはいっさい記載がありません。
演奏者名も解説もいっさいなし。謎です。

投稿: Bowles | 2005年6月26日 (日) 14:15

Bowlesさん

>パドヴァのスクァルチョーネ工房にオリジンを持つ画家たちが圧倒的に自分の好みなのだ、ということです。

ほお・・・それは面白いですね。
音楽だと特に演奏家の場合は、ある特定のエコールに属する人が好きだというのは、普通に聞く話しですが、美術だとまたちょっと違いますものね。

>横位置のナラティヴ的画面のなかに置いた聖会話のひとつの試み

とても興味深い説だと思います。
画面を左右と手前・奥の4つに分割した場合、左下以外の3つのパートは、何を意味していると思われますか?

投稿: TARO | 2005年6月27日 (月) 00:34

>Bowlesさん、TAROさん、
私もクワトロチェント(やはりトスカーナ派)に圧倒的に惹かれます。スクァルチョーネ系統というのは、ヴェネツィア派及びその周辺内での「線描的」傾向という程の感じでしょうか。私もゾッポはともかく、マンテーニャとクリヴェッリは大好きですし、フェッラーラ派の一部も好きですから解る気がします。基本的にトスカーナ15世紀の知的で静謐な画面構成が好きですので、ヴェネツィア派はジョルジョーネまでというのは私も同じです。勿論ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、パルマ・ヴェッキオの官能的女性像はいそいそと見に行きますし、ティントレット後期の幻想性や、特にロットーの不思議な力には無関心でいられませんが、15世紀トスカーナ絵画を見るときのような、単に美しくて心地よいものを見る以上の「世界観的経験」には至らないとでも言いますか…。

ところでBowlesさんのサイトはあるのでしょうか?

私も作曲家のベッリーニ大好きです。どちらかと言うと「ノルマ」より「清教徒」が好みです。小生のカンでは、TAROさんは逆ではないかな。

投稿: 助六 | 2005年6月27日 (月) 09:43

助六さん

バロックが好きな私としては、クワトロチェントがお好きというだけで、知的で洗練された雰囲気が感じられ、憧れのまなざし・・・
なんだか厳しすぎて怖くて。

>どちらかと言うと「ノルマ」より「清教徒」が好みです。小生のカンでは、TAROさんは逆ではないかな。

うわ。「ノルマ」と「清教徒」に順位を付けるなんて、無理な話です。それはもうカバリエとデヴィーアに順番をつけるようなもの。

投稿: TARO | 2005年6月27日 (月) 22:27

TAROさん

「聖会話」説はモチロン私のオリジナルではありませんが、今まで
画中に描かれた個々の要素の解読に気を取られすぎて全体が見えて
いなかった私にとって、「聖会話」をキーワードにすることで初めて、
《聖なる寓意》の、風景と人物とが融合した、画面全体にただよう、
円熟期のベッリーニらしい空気感の美しさに気づいたというわけで
して...。

>画面を左右と手前・奥の4つに分割した場合、左下以外の3つのパートは、何を意味していると思われますか?

あまりいじめないでくださいね(笑)。
この絵は四つに分割というより、前景の、聖母子と諸聖人のいるテラス
と、聖アントニオが隠者パウロと出会うまでを想起させる(風景の中で
展開するプレデッラといった趣向でしょうか)水のある山岳風景の二つの
画面に分割されると思います。その二つの画面が、テラスのクロス模様
の上の生命の樹から開け放たれた扉、そしてほぼ消失点である洞窟の上
の十字架へと導かれる視線によってひとつのものになる...。イザベラ・
デステのためのものという説もありますが、当時のヴェネツィアの、ベ
ッリーニも属していたであろう知的サークルの一員のために描かれた、
極私的な宗教的メディテーションのための一枚、というような気がします。

助六さん

>スクァルチョーネ系統というのは、ヴェネツィア派及びその周辺内での「線描的」傾向という程の感じでしょうか。

そうですね、パドヴァでトスカーナから接ぎ木されたドナテッロの
「機能線」にふれ、ロンギ言うところの鉱石や貴石を思わせる質感
の世界を築いていった「絶望的なヴァガボンドたち」のことです。
トスカーナ、そして中部イタリアでは、私も圧倒的にピエロ・デッ
ラ・フランチェスカ、そしてちょっとさかのぼってカスターニョが
好みです。

サイトは持っておりません。ごくいくつかのサイトにこうやってお
邪魔させていただいています。

投稿: Bowles | 2005年6月29日 (水) 00:40

Bowlesさん

丁寧なレスありがとうございます。

>あまりいじめないでくださいね(笑)。

なんということを(笑。
いまあらためて画集を開いてみましたが、とても説得力のある説と感じ入りました。それにしても見れば見るほど魅きつけられる作品です。

Boelwsさんも助六さんも、サイトを作られてないなんて、もったいないような気がします。作るのはとても簡単ですよ。(維持するのは、それなりに大変かも知れません。)

投稿: TARO | 2005年6月29日 (水) 11:11

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