ロバート・ワイズ監督が逝去
ロバート・ワイズ監督が亡くなられました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
ワイズ監督についてはいまさらご紹介するまでもないと思いますが、映画「ウエスト・サイド物語」「サウンド・オブ・ミュージック」などの名監督。ネットニュースにもあるようにワイズは編集者出身で、「市民ケーン」の編集を担当したことでも知られています。
1944年に監督に転向。カンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した「罠」、
SF映画の古典として知られている「地球が制止する日」、
ポール・ニューマン主演で当時新人のスティーヴ・マックイーンが端役で出演したことでも知られる「傷だらけの栄光」、
スーザン・ヘイワードがアカデミー主演女優賞を受賞した「私は死にたくない」、
クラーク・ゲーブルとバート・ランカスターが共演した「深く静かに潜行せよ」、
再びジュリーと組んだ「スター!」、
これもいずれSFの古典として君臨するであろう「アンドロメダ・・・」、
ついさきごろ十瑠さんのサイトでも取り上げられていたピーター・フォンダとリンゼイ・ワグナーの「ふたり」、
スタジオ撮影と実際のニュース・フィルムとを絶妙に組み合わせた「ヒンデンブルグ」、
まだ若かったアンソニー・ホプキンスの底知れない深い瞳が印象的な「オードリー・ローズ」、
そして「スター・トレック」などなど。
二つのミュージカル大作は別格として、ワイズの傑作群の中から、あくまでも私が見た範囲内でということで、最高傑作を選べば、それはなんといっても「砲艦サンパブロ」でしょう。
「もしハドソン川に中国の軍艦が浮かんでいたら」というスーパーで始まるこの映画は、1966年の製作。
舞台を1920年代の中国にとりながらも、ワイズがヴェトナム戦争への痛烈な批判をこめて作り上げたものでした。
大国の海外派兵の陰で犠牲になっていく、名もない兵士たち。スティーヴ・マックイーン(アカデミー主演男優賞ノミネート)、リチャード・クレンナ、リチャード・アッテンボロー(ゴールデン・グローヴ助演男優賞受賞)、マコ岩松(アカデミー助演男優賞ノミネート)、サイモン・オークランド、キャンディス・バーゲン。
役者も完璧に揃って、気骨ある社会派の巨匠、ロバート・ワイズが渾身の力を振り絞って作り上げた名作でした。
(ヴェトナム脱走兵として世界を転々としていた男が、やがて故郷に帰る話を甘美なラヴ・ロマンスをからめて描いた「ふたり」は、いわば大作の交響曲「砲艦サンパブロ」に対するチャーミングなアンサー・ソングのようなものでした。)
この「砲艦サンパブロ」のロケ地探しなどが難航して、クランク・インできない状態でいた時に持ち込まれたのが「サウンド・オブ・ミュージック」の話(当初予定されていたワイラーのキャンセルによる)だったというのも、面白いところです。
もし「サンパブロ」が予定通り撮影されていたら、ワイズは「サウンド・・・」を監督することはなく、誰か他の監督にまわっていったでしょうから。
(もしジョシュア・ローガンあたりにいっていたら、もっとずっと舞台よりの作品になっていたことでしょうねえ。)
ワイズという人はワイラーやフォードほどではありませんが、アカデミー賞にめっぽう強く、全監督作品39作をあわせると(たぶん)62部門で候補(☆)にあがり、(おそらく)20部門で受賞(★)しています。
1953 砂漠の鼠(1部門候補) ☆脚本賞
1954 重役室(4部門候補) ☆助演女優賞、撮影賞、美術賞、衣裳デザイン賞
1956 傷だらけの栄光(3部門候補、2部門受賞) ★撮影賞、美術賞、☆編集賞
1958 私は死にたくない(6部門候補、1部門受賞) ★主演女優賞、☆監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、録音賞
1961 ウエスト・サイド物語(11部門候補、10部門受賞) ★作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、ミュージカル映画音楽賞、編集賞、録音賞、☆脚色賞、
1962 Two for the seesaw (2部門候補)☆撮影賞、歌曲賞
1965 サウンド・オブ・ミュージック(10部門候補、5部門受賞) ★作品賞、監督賞、ミュージカル映画音楽賞、編集賞、録音賞、☆主演女優賞、 助演女優賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞
1966 砲艦サンパブロ(8部門候補) ☆作品賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、美術賞、作曲賞、音響賞、編集賞
1967 スター!(7部門候補) ☆助演男優賞、撮影賞、美術賞、衣裳デザイン賞、ミュージカル映画音楽賞、歌曲賞、音響賞
1971 アンドロメダ・・・(2部門候補) ☆美術賞、編集賞
1975 ヒンデンブルグ(5部門候補、2部門受賞) ★特別業績賞(視覚効果) 、特別業績賞(音響効果)、☆撮影賞、美術、音響賞
1979 スター・トレック(3部門候補) ☆作曲賞、美術賞、視覚効果賞
ワイズ個人としての受賞はプロデューサーとして「ウエスト」と「サウンド」(作品賞はプロデューサーが受賞する)、監督としても同じく「ウエスト」「サウンド」であわせて計4個。ノミネートはそのほかに監督として「私は死にたくない」、プロデューサーとして「サンパブロ」、さらに編集者として「市民ケーン」で編集賞にノミネートされています。
91歳。もう長いこと現役ではありませんでしたが、亡くなったとなるとさすがに寂しいものが・・・
| 固定リンク


コメント
はっきり覚えているのは、「サウンド・オブ・ミュージック」と「ウエスト・サイド物語」です。特に前者には、はまりました・・・
投稿: edc | 2005年9月15日 (木) 23:52
「サウンド・オブ・ミュージック」には、私もはまりました。
あの映画のトラップ邸みたいな家を湖畔に建てるのが夢だったんですが、ちょっと無理みたい・・・
「ウエスト・サイド物語」はさすがに私たちの世代にとっても『古典的名作』という感じになってしまいます。もちろん見たのはリバイバルでした。
投稿: TARO | 2005年9月16日 (金) 00:59
私も。いつ、見たのか、もう、さっぱりと、忘れてしまいましたが、最初の出だし、素晴らしいですね---。あそこに、行くのが夢でしたが。。。でも、TAROさん、あきらめちゃあ、ダメ。
私、最近、ナポレオン3世の伝記の本で学びました。恐ろしく信念の男。両親の遺産、今で言えば、数億円を、先はわからないのに、夢のために、使いつづける度胸の良さ-------。
ああ-ああ、今夜も、おそくまで、CNN.。新学期始まって自重してたのに。。。さっき、入った、情報、いよいよ、ハリヶ-ン、オフェ-リア登場。state-of-emergency,insurance
crisisと、またまた、やっています。今回の州は?まだ、勉強不足で、前回、共和党の勝った州を把握していませんが、ニュ-オ-リンズ、ノアの箱舟に見えませんでしたか?当分、アメリカは、内政に追われて、アホな、イランに戦争を仕掛けないだろうと、ほっと、しております。それにしても、ハリヶ-ンの命名、誰がしているのでしょう、由来も説明してくれれば。。。
日本の台風何号より、楽しいですね。
投稿: YOKO | 2005年9月16日 (金) 03:33
初めてのメール。私も絵を描いています。お時間あればゼヒゼヒホームページとブログへお越しください。一期一会の「会」を「絵」に代えたページです。古い名画も大好きです
投稿: 山口ももり | 2005年9月16日 (金) 08:19
YOKOさん
あきらめるというか、お金持ちになることにも、不動産を持つことにも執着心があまりないので、まあ無理でしょう。
明日食う米もないというのでは困りますが、でも不要な(?)金儲けのために努力するヒマがあったら、何か別のことに時間をかけたい気がします。
>数億円を、先はわからないのに、夢のために、使いつづける度胸の良さ-------。
ああ、こういう人が好きなんですね。だんだん分かってきました。
ハリケーンの命名、誰がやってるのか知りませんが、国際的に決まっていて、アルファベットのAから順番につけられていくみたいですね。昔は女性の名前に決まってたのが、男女同権に反すると言うので、今は男性の名前と交互に使われます。
日本の台風の○○号というのは何年の台風か分からなくなるのが、一番の困り者ですね。かといって「2005年台風14号」みたいな言い方も、長すぎてなんかなじまないような・・・
投稿: TARO | 2005年9月16日 (金) 11:06
山口ももりさん、はじめまして。
TARO'S CAFEへようこそ。
今、ブログにおじゃましてきました。
なんて素晴らしい作品!と思ったら、プロの方でいらしたんですね。
それに毎日のように更新されて、全部絵を描かれているのにも驚きました。
「マザー・テレサ」ご覧になったんですね。私はまだ見てないんですが、オリビア・ハッセー、あらゆる人から絶賛されてますね。
投稿: TARO | 2005年9月16日 (金) 11:14
“サンパブロ”は、もう一度観たいですね。
TVの吹き替え版で観たので、多分だいぶカットされていたと思います。
中国という舞台と、戦争というのが、“今”を感じさせるかも知れませんね。
確か、ラストは哀しいものだったような・・・。
投稿: 十瑠 | 2005年9月16日 (金) 17:02
>>ハリケーンの名前
一覧表がありますので、興味のある方はどうぞ(^。^
http://www.fema.gov/kids/hunames3.htm
オフェーリアは東海岸に沿って北上中です…
この影響かしら?ちょっとだけ私の生息地域も、朝からしとしと雨です…
投稿: ヴァランシエンヌ | 2005年9月16日 (金) 21:57
ワイズ監督の訃報記事、今日の新聞で知りました。
サウンド・オブ・ミュージックやウエストサイド・ストーリーはTVの放送で見た事がありましたが、どちらも好きなミュージカルでした。
サウンド・オブ・ミュージックって凄く美しい風景が印象的で素晴らしかったですねぇ。
ワイズ監督のご冥福をお祈りします。
投稿: YUKI | 2005年9月16日 (金) 22:34
十瑠さん
「サンパブロ」は、おっしゃるとおり今の時代にもその存在意義を失っていないと思います。いや、むしろますます切実なテーマになってるかも。
3時間超の大作ですから、民放TVの番組でしたら、かなりきつそうですね。
はい。ラストは哀しいです・・・。マコもですが、アッテンボローが良かったです。
(まさか後にこの人がアカデミー賞監督になるとは、夢にも思いませんでしたが。「ガンジー」とか「遠い夜明け」とか、ワイズと志は同じ人なんだなと思います。)
投稿: TARO | 2005年9月16日 (金) 23:07
ヴァランシエンヌさん
ハリケーンの名前サイトの紹介、ありがとうございます。
なんとカトリーナとオフィーリアの間に、ちいさなハリケーンが3つも誕生してたんですね。
ハリケーンの被害、無いように祈っております。
投稿: TARO | 2005年9月16日 (金) 23:14
YUKIさん
「サウンド・オブ・ミュージック」、私もあの雲が次第に晴れてきて、オーストリア・アルプスの景色が見えるオープニングから、すっかりひきこまれてしまいました。
「ウエスト・サイド物語」のロケが行われたあたり(つまりウエスト・サイドですが)は、再開発が行われて現在はメトロポリタン・オペラなどが建っていますね。
投稿: TARO | 2005年9月16日 (金) 23:20
「ガンジー」も「遠い夜明け」も観ましたよ。双葉十三郎さんは、監督処女作「素晴らしき戦争」を激賞されていましたが、これは観てないです。
特に「遠い夜明け」は、「キリング・フィールド」と並ぶ内戦ものの傑作だと思いますね。
若い頃は、“アワテンボウヤ”とか呼ばれていたようですね、日本の評論家筋には。
投稿: 十瑠 | 2005年9月17日 (土) 07:58
十瑠さん
「素晴らしき戦争」私も見逃してますねぇ。
「遠い夜明け」は良かったですね。
あとはホプキンスの「マジック」も面白かった。
でも「ジュラシック・パーク」以来、一般にはまた俳優としてのイメージの方が強くなったかもしれませんね。
>アワテンボウヤ
なんでしょう?慌てものの役が多かったんでしょうかね。演技がセカセカしてたとか??
投稿: TARO | 2005年9月17日 (土) 11:35
アッテンボロー → アワテンボロー → アワテンボウヤ です。
確か「大脱走」の解説の時に、淀川さんがおっしゃってました。
投稿: 十瑠 | 2005年9月17日 (土) 13:55
え~・・・・。
昔の人のユーモア・センスって、ちょっとわかんないかも・・・。
投稿: TARO | 2005年9月17日 (土) 21:39