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2006年11月16日 (木)

NBS ~音楽ニュースの落穂拾い Watch What Happens

20061116battlejp音楽界の話題を2つ

1.キャスリーン・バトル来日中止

だそうです。理由は不明。カジモトのHPには「本人の都合により来日が不可能になった」としか書いてません。

METをクビになって以降、オペラの舞台はもちろん録音でもバトルの声を聞くチャンスはあまりなくなってしまったわけですが、今回4年ぶりの来日のはずだったんでしょうか。もし1月に東京に行ければ、聞いてみてもいいかなと思ってました。といっても特に彼女の歌声が好きというわけではないのですが。
都合って、どうしたんでしょうね?

2.NBSが寄付を募集

NBS、日本舞台芸術新興会から寄付を呼びかけるDMがきました。

なんでも2005年にNBSが特定公益増進法人に認可されたため、寄付に対して税制上の優遇措置が講じられるんだそうです。(一般の財団法人とはそこが違う)。

特定公益増進法人はたとえば赤十字社とか宇宙開発事業団とか日本盲導犬協会などがそれにあたりますが、そうか、NBSも公益を増進させる法人だったんだ。ううむ、知らなんだ・・・

ということで「特定公益増進法人に対する寄付」について調べてみました。

特定公益増進法人に対する寄付といえども、全額経費として認められるわけではありません。

個人の場合は所得金額(収入から経費をひいたもの)の30%から5000円を引いた額になります(平成18年度から適用。17年度までは1万円を引いた額)。
私たちのようなしがない自営業者のばあいはそうでもありませんが、サラリーマンの場合は所得金額はかなり多くなるはずで、相当な金額まで寄付しても所得控除されそうです。

次に企業からの寄付の場合ですが、一般に寄付(一般の財団法人や宗教法人などに対しての)には税法上で損金として認められる限度額というのがあります。

特定公益増進法人への寄付はこれとは別枠で認められています。ただしこれも上記の限度額と同じ金額が上限になっていて、全額が控除できるわけではありません。

この限度額というのは、
(資本金×0.25%+所得金額×2.5%)の1/2 として計算します。

例:資本金1億円、所得金額(収入から経費を引いたもの)5000万円だった場合は、
1億円×0.25%=25万円 5000万円×2.5%=125万円 で、
(25万+125万=150万)÷2=75万円
これが控除できる上限ということになります。

この上限額もしくは特定公益増進法人への寄付金額のうち小さい方が、まず損金として控除できます。

例えば一般の寄付金50万円、特定公益法人への寄付が200万円だとしましょう。
まず200万円のうち上限額の75万円が特定公益増進法人への寄付として、損金に計上できます。

そうすると125万円残りますが、これは一般の枠に回せます。125万円に一般の寄付金50万円を足して175万円。このトータル金額のうち75万円が一般寄付金分として損金に繰り入れることが出来るわけです。

つまりNBSに200万、どっかの財団法人に50万寄付して、もしNBSが特定公益増進法人でなければ、合計250万円の寄付のうち、損金になるのは75万だけですが、特定公益増進法人になったために、トータル150万円を控除できるというわけです。

NBSのDMによれば「皆様からのご寄付」によって何が出来るかというと、
1)チケット料金の引き下げ
2)公演の質的な向上
3)日本全国における公演回数の増加
4)一流の芸術団体・アーティストの積極的な招聘
ということになるそうです。ただしこれらは「展望」ということで、それを可能にすると言う公約ではありません。私はいずれの項目もほぼ不可能に近いのではないかと思います。

例えば質的な向上だったら、NHKホールではなく新国立劇場を使うのが、目覚しい向上を可能にする最も簡単な手段だと思いますが、佐々忠氏にとっては決してありえないことなのでしょう。
もしどこかの企業が、新国での公演を前提に巨額の寄付を行った場合、NBSは受けるでしょうか?断るでしょうか?私がお金持ちならやってみるんですが。

日本全国における公演なんて、少なくともオペラに関しては絶対ムリでしょう。まあコンサートもやってますから、それでお茶をにごせば展望実現ということになるのでしょうか。

1のチケット料金の引き下げですが、これはNBSこそが日本における来日スター歌手のギャラ高騰の元凶だったわけで、いまさらしおらしいふりして引き下げって(笑)。

日本におけるオペラ公演の歴史を考える時に、NBSの果たした役割はきわめて大きいと思います。
なかでも1979年から81年にかけてのC・デイヴィス指揮のコヴェントガーデン、ベーム率いるウィーン国立歌劇場、アバドとクライバーによるスカラ座と続いた一連の来日公演は、(建物以外丸ごと持ってくるという意味での真の引越し公演が初めて実現されたという意義も含めて)日本のオペラ上演史のハイライトといっても良いでしょう。

これらを実現させた、当時の佐々木氏の実力というか実行力は凄い物があるし、それらに接することが出来たという意味で感謝もしてますが、最近はどうなんでしょうか?
劇薬は副作用も強くて、チケット代の高騰、新国への異常な粘着ぶり、デヴィーアのギャラ問題などなど、どうも反作用の方が目立つことがしばしばです・・・。

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コメント

来日…今の私を一番悩ませる甘美な言葉…(違^^;)

まぁ、それはおいといて。。
詳しい税制のこと等は、私にはわからないので、突っ込まないでm(__)m という前提でのコメントですが:

シカゴやメトをはじめとする、アメリカのオペラハウスも、寄付金は常に募ってますよね。
一度行った劇場からは、しつこいくらいにDMや電話が来ましたよ(^^;
帰国前に行ったシカゴからも電話がかかってきて「もう帰国しますから、最後の思い出として行ったんです」と言ったら「思い出ついでに寄付も如何?^^;」って(笑)

まぁ、あちらは寄付金社会ですからね。
日本の場合、上っ面だけアメリカの真似してみよう、って感じに取れなくもないですね。社会構造の根本が違うから、ムリな感じを受けますね…
シロート的には「なんで来日公演を、新国立劇場でやんないのよぉ?!」と思います。

投稿: ヴァランシエンヌ | 2006年11月17日 (金) 12:31

ヴァランシエンヌさん

モーツァルトかショスタコーヴィチなら是非とも聞きに行きたいですけどねえ・・・
(♪どこからともなく聞こえてくる、らあ~~~~む~る♪)

おっしゃるように社会の構造が根本から違いますから、いきなり寄付をというDM送られても驚くばかり・・・。
アメリカは本当に寄付大国ですものね。なによりも寄付金に対する税金の取り扱いが全然違うようなので、寄付がしやすい。学問も芸術関係も基本的に民間だし、国民の意識がまったく違うんでしょうね。

アメリカ方式は個人が自分の望む分野を発展させることができるという選択の自由がありますが、その代わりにある程度お金の集まり方が偏ってしまうという危険性もありますね。
(たとえば日本の大学が、税金による補助を無くす代わりに、寄付金で運営というやり方をした場合、大学に対する寄付は、旧帝大や早慶などの有名私立大に集中して、その他の私大や地方国大は資金不足に陥る可能性がある。)

だからどちらが良いかというのは一概には言えないと思いますが、日本ももう少し損金参入枠が増えてもいいかもしれません。

投稿: TARO | 2006年11月17日 (金) 23:42

調べたらバトルももう57才なんですね。ほんとにヴォルピ監督によるメト放逐以来彼女の名前を見なくなってしまいましたが、と言うことは、ヴォルピの決断はマネージメント(ウィルフォード?)やディスク産業とも申し合わせてということだったのでしょうかね。

パリへの出演は大変少なく、オペラは84年にブロントヒェン歌っただけだそうで、私は彼女のオペラには接する機会は遂にありませんでした。95年にリサイタル一度聴いただけです。あの種の声色に特に惹かれるほうではないですが、シューベルトのリートがしっかりした出来で意外でした。「エナメル美声の非知性派歌手だ」なんて聞いてたもんですから。家に帰って当時は定期購読してた「フォノ・フォールム」のほぼ同一プロのDG録音の批評見たら、シブシブ誉めてる感じで笑ってしまいました。
94年のメト追放の記憶が鮮やかな頃で、私も「そんなにトンデモ歌手?」と思いながら出掛けましたが、客の目に見える部分は、にこやかで感じの良い観客サービスで、ソツないステージ・マナーでした。
彼女は87年のカラヤンとのヴィーン・ニューイヤー・コンサートがキャリアの頂点だったような印象持ってます。無論TVで見ただけですが「春の声」素敵でした。

帰国した折、佐々木氏の「オペラ・チケットの値段」立ち読みしましたが、事実誤認の多さや議論の質は残念だったものの、あの81年スカラ公演を実現させたマネージャーとしての手腕は尊敬してるし、感謝もしてます。カネ積めばあの演目と出演者が揃うという訳ではなかったでしょうから。

日本のオペラ事業を思い起こすと、すぐ以下のような疑問が浮かびます。
-客が内外団体のオペラ公演に自分のポケットから払っている総額は、恐らく欧米「オペラ大国」に比しても巨大だろう。
-それだけの大金が外タレ・スターに集中して向かうメンタリティーを、メディアの扱い、興行上の工夫、料金システムの点からも変えられないものか。そうすれば日本の音楽シーンはより多様になりうるだろう。
-チケット5万円は、「需要がある」(最近は崩壊?)といった論理とは別に、普通に考えて異常。
-新国も公共サービスとしては安い券が少ない。小生が帰国時に観たカゾッラ出演「マノン・レスコー」の時は、安い当日売りを買えない人が沢山いる一方、空席が目立った。

やはり、かつての新芸術家協会や、NBSみたいな民間マネージャーだけを非難してもコトは変わらないのでしょう。
長く不況と言われながら、これだけ外来オペラ客演が相次いだ国は他に一つもなく、「オペラなんて一部の人のもの」と言われながら、オペラ人口とその経済規模は驚くべき水準という現実がある訳ですから、オペラのファイナンス形態を包括的に考え直す時期に来ていると思います。

新国については、公共サービスとしての任務を再確認し、まあ高い席の値段は現状で仕方ないにしても、私がいつも思うのは、1000円程度の当日売り固定立見席を、学生が1時間前程度に行って大体買える程度の数設置できないのかということです。本当に法的・技術的障害があるのでしょうか?
欧州でもベルリンのように公金による劇場維持は難しくなっているわけですから、日本の民間マネージャーについても、寄付や企業メセナを拡大する税制改革でしょうかね。

投稿: 助六 | 2006年11月20日 (月) 12:59

これも書き忘れましたが、「デヴィーアのギャラ問題」って何ですか?
周知の話なんでしょうけど。

投稿: 助六 | 2006年11月20日 (月) 13:32

助六さん

>ヴォルピの決断はマネージメント(ウィルフォード?)やディスク産業とも申し合わせてということだったのでしょうかね。

最近日本でも翻訳出版されたヴォルピの回想録によると、たった一人で決断したような書き方です。まあ根回ししていたとしても、書かないかもしれませんが。
それによれば以前からバトルには困り果てていて、レヴァインらが擁護していたので我慢したけど、ついに堪忍袋の緒が切れて、うむをいわせず電撃的に解雇したというような感じ。(彼女はレヴァインの前ではネコをかぶっていたとのこと。)
バトルも出る予定だった舞台のリハーサルで解雇を発表したら、ロザリンド・エリアスが喜びのあまりヴォルピに抱きついてきたとか。

日本ではウイスキーのCMで特に人気があったので、ずっとファンは多かったと思うし、今でもコンサートをやればある程度は客席は埋まるんじゃないかと思うんですが・・・


日本のオペラ事業の現状は、おっしゃるような疑問が山積みでなにか歪んだ形になっているようには思えます。しかしどうすればいいのか、何のアイディアも浮かんではこないのですが。

1)日本における劇場での公演の形態は、昔から全く変わってない(藤原・二期会に代表される国内団体+海外のハウスの来日公演)。
2)ただしその量はかなり増えている(新国という税金で運営する藤原・二期会風団体の誕生+超有名オペラハウスだけでなくいわばマイナーリーグからも頻繁に来日)。

1の形というのは戦後の日本でのオペラ振興と、憧れ・目標としての海外からの来日という意味で、70年代までの形態だったのかもしれません。また支えてきたのはコアなオペラ・ファンだったとも言えるのでしょう。それを締めくくる意味でのスカラ座初来日公演が81年だったのは象徴的です。

その後の映像による普及や、三大テノール人気に触発された裾野の広がり。海外で「本場もの」を見てきた人が多くなっていて、観衆の求めるものが変わってきている可能性が高い。

といったような要素に、2(1のやり方を単純に拡大)では対応できてないのかなという感じも。
新国の立見席の法的とは消防法の問題でしょうか?なんとでもなりそうな気がしますが、どうなんでしょうねえ?


デヴィーアのギャラ問題というのは、フィレンツェ歌劇場が96年に来日して「ルチア」(ヴィック演出、メータ指揮)を上演した時から始まる話です。
この時はデヴィーアとグルベローヴァのダブルキャストで来日公演が行われたんですが、これはデヴィーアのために出された新プロダクションで、グルベローヴァはフィレンツェでは歌っておらず、日本のための特別キャストでした。

当然公演は初日がデヴィーア、2日目がグルベローヴァだったんですが、2日目のグルの日が天覧公演になり、しかもTV中継もこの日と、ほとんど2日目が初日のような取り扱いでした。
しかも後からグルベローヴァにはデヴィーアの3倍のギャラを払っていたということが分かり、デヴィーアが怒ったというものです。

続く2001年の来日での「椿姫」では、デヴィーアはグルベローヴァと同額のギャラを要求。NBSはこれを蹴って、本来これもデヴィーアのために出されたプロダクションであるにもかかわらず、来日公演はデヴィーア抜きで行われました。
代わりにデヴィーアはその前年に、藤原の招きでヴィオレッタを歌いました。

これだけなら、「まあそんなこともあるさ」という内輪話で終わるのですが、佐々木氏は、ギャラの高い方を選んで来日公演に参加しなかったお金に汚い歌手というような書き方をして貶していて、こういうやり口は逆に佐々木氏への信用をなくす(少なくとも私は無くした)ことにしかならないと思うのですが。

また詳しくは知りませんが、ブルゾンともギャラをめぐって対立があったようで、ブルゾンはNBS主催の来日公演には参加しなくなりましたが、その途端に「終わった歌手」扱い。まあ確かに声的には終わってるかもしれませんが、どうも佐々木氏の性格の問題点を感じさせるような。

トップの性格がどうだろうと、組織としてちゃんと運営されてればそれでいいのですが、ご本人が自らDMを通じてばんばんこういう根拠ない(と思われる)悪口雑言をたれながすわけで、なんだかなあと思ってしまいます。

投稿: TARO | 2006年11月20日 (月) 23:45

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