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2012年1月13日 (金)

またもマラ9で受難、こんどはギルバート

20120113mahlercartoon_1907 「思い出の名盤」のマーラー9番の項で、小澤&ボストンの受難について書きましたが、今度はアラン・ギルバート指揮ニューヨーク・フィルのコンサートでiPhone のアラームが鳴り続け、コンサートが中断するというハプニングがあったそうです。事件の顛末は――

同フィルが本拠地リンカーンセンターでマーラーの交響曲を演奏中、最前列の客席からマリンバをアレンジした携帯音が鳴り始め、数分続いたという。
 指揮者のアラン・ギルバート氏が携帯のスイッチを切るように注意したが、鳴りやまないため演奏を中断。最前列にいた年配の男性が切るのを確認した上で、曲の途中から演奏を再開した。
 同氏は聴衆に「(普通は騒音を無視するが)今回はひど過ぎて続けるわけにはいかなかった」と述べ、演奏中断に理解を求めた。(共同)

(日刊スポーツ)

この記事にはマーラーの交響曲としか書いてありませんが、こともあろうに9番のしかも終楽章だったそうです。笑ったら気の毒ですが、もう東海岸ではこの曲はやめたほうがいいんじゃないでしょうか。

しかもこれは受信音ではなくてアラーム音。つまり切るまでずっと鳴り続けているもの。
弱音部分で鳴り始め、その後強音部分を経て弱音に戻ってもまだ鳴っていたので、ついにギルバートが演奏を止めたということのようです。

NYタイムズの取材によれば、問題の音を出した人は60~70歳の会社役員の男性で、20年来のニューヨーク・フィルの聴衆だそうです。今までブラックベリーを持っていたのに、数日前に iPhone に変えて、使い方がよく判らず、まさか自分の iPhone がなってるとは思わなかったのだとか。

持ってる人はお分かりかと思いますが、持ってない人はいったいどんな音か聞きたくなりますよね、iPhone のマリンバ・トーン。これです。

これがマーラーの終楽章でいきなり鳴ったとしたら…。いくらマーラーの交響曲には、コラージュ的な要素があると言っても、さすがにこれはねぇ。聴衆と演奏家が迷惑だったのは当然として、問題の男性も極めてショックだったらしく、NYタイムズの電話インタビューに(iPhone ではなく加入電話で)「2日間眠れなかった」と話したそうです。

でまあ、具体的にはこんな状況になったのではないかと思われます。ちょっと再現VTRを作ってみました。ギルバートの音源(ロイヤル・ストックホルム・フィルとの)は持ってないので小澤さんとサイトウキネンのを借りました。

で、翌日アラン・ギルバートがツイッターでつぶやいたことには、「昨夜の件で一つ学んだ。マーラーが決してマリンバを使わなかったのには理由があるということを」。さすがニューヨーカーでございますね。

※最初の画像はマーラーのカリカチュア(第6交響曲について)、Wikipediaより。

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コメント

さもありなん、な事件ですね。

これがもしスティーヴ・ライヒの"Music for 18 Musicians"だったなら、問題なく演奏続行されたことでしょう。

投稿: ayame | 2012年1月14日 (土) 03:00

こういう音って、音そのものに対して無意識なので、鳴っても自分が原因だと思わない人が少なくないかもしれません。私も何度も聞いていたのですけど、マリンバという認識は全然ありませんでした。先日職場の共同使用の部屋に置いたままちょっと席を外して、戻ったら、「マリンバの素敵な曲が鳴ってるけど・・だれの携帯かしら」って言っている人がいたのですけど、すぐには自分のだと思いませんでした。いつもサイレントモードなんですけど、その時は忘れていたんですね。劇場では電源オフにしてますけど、忘れていて、万一鳴ったらショック。気をつけないといけませんね。二日眠れなかったっていうその方の気持ち、よ〜〜くわかります。私の場合は全然問題の場所ではなかったのでショックでもなんでもなくて、マリンバなんだと認識しただけですけど。

投稿: edc | 2012年1月14日 (土) 07:41

早速VTRを見聞き、こちらもいたたまれないような気分になる臨場感に笑ってしまいました。
マリンバ・トーンというのは初めて聞くと思いましたが、聞いてみるとこんな音はすでにパリの演奏会場で聞いたような気もします。
パリの聴衆のマナーはどん底(いやイタリアはもっとひどい。上には上があると感心しました)ですから、このマリンバ音なんか可愛く感じられるような結構長い凄まじいベル音や頓狂メロディーにも何度も遭遇してますが、それによる演奏中断は残念ながらまだ経験したことがありません。

パリで経験したケッサク演奏中断というと、

-ヴァーレットのオケ伴リサイタル(オール・ヴェルディでマクベス初め素晴らしかった!)。アリアの間に仏放送フィルがVnとコントラバス楽員2人をソロに立て中継ぎ曲を奏したんですが、音程がバカずれの凄まじい代物。若い奴2人が天井から執拗なヤジを掛け、楽員は演奏を中断して全員退場し指揮者も追随。数十分間会場は騒然となった後、その後の間奏曲はすべてキャンセルして継続することで決着!

-ブレンデルのリサイタル。ベートーヴェンの最初から咳その他で大変賑やか、ブレンデルは客席をジロジロ。緩徐楽章で何と酒瓶らしきものの「ガッチャーン、ゴロゴロゴロー」という音が平土間に響き渡り、ブレンデルはついに中断して堪忍袋の緒が切れたジェスチャー。楽章アタマから弾き直し。

-クリスティー指揮レザール・フロでモンテヴェルディのアカペラ・マドリガーレ。
開始数秒後に平土間数列目でおっさんが大ぐしゃみ。クリスティは瞬時に手を叩いて中断、客席に振り向いておっさん指差しで「こうして手で覆って咳できんのか!」と怒鳴りつけ、真っ赤な鬼形相でド迫力。ほんとにアタマに血が昇ってた。まあ分かるね。

その他ハイティンクとティーレマンがそれぞれマーラーとブルックナーでのフライング拍手に露骨に不快のジェスチャーをしたのも見てます。

>60~70歳の会社役員の男性で、20年来のニューヨーク・フィルの聴衆

欧米の平土間聴衆の典型という感じ。つまりこの人、40代半ばまではコンサートに来る習慣はなかった人だと思うんですよね。欧州のクラシック聴衆は30年来年齢層の高さはまったく変わってないからそうとしか思えない。私はフツーの欧州聴衆の唖然とするほどの低知識・低感性はカネとステイタスが出来て初めてコンサートに来る人が多いせいも大きいと考えてます。だいたい平土間最前列でマラ9聞いたって完璧何にも分からんわな。

>使い方がよく判らず、まさか自分の iPhone がなってるとは

パリでも10秒続く各種騒音・不都合は珍しくありませんが、確かに自分が他人に迷惑をかけていることに気付いていない高齢者の例が多いと思うんですよね。
いや私も劇場でに限らず、気付いてないことは多いのかもしれません。でも自分ではどうしようもないわけで、悲しいながらこれが鈍い上にさらにボケていくということか。

日本でもサントリーホールでゲルギエフとロッテルダムによるマラ9が本人は気付いていない補聴器のハウリング音でぶち壊され、払い戻し要求騒ぎに発展したと聞いてます。
高いカネ払って体調を整え9番楽しみにしてきたマーラー・ファンの怒りは骨身にしみますが、「お前も耳遠くなったら劇場に来るのは止めるか」と言われたら考えてしまいますね。

ギルバート/NYフィルは2010年に2回聴いたことがあります。シュトラウスの「ドン・ファン」やブラ4など驚くようなものではないにしてもしっかりした演奏で楽しめました。NYフィルもメータやマズアの時よりも技術的に安定してるように感じました。たまたまかも知れないですけど。

投稿: 助六 | 2012年1月14日 (土) 09:25

ayameさん

ライヒのMusic for 18 Musiciansって、マリンバ3台も使うんですね。
そのうちライヒは書くかも知れませんね、iPhone を使った曲。
その前にayameさんがいかがでしょう?「3台のiPhoneのためのコンチェルティーノ」とかなんとか。

とりあえずMusic for 18 MusiciansにiPhoneが乱入してきたヴァージョンを、ちょっと作ってみました。

http://youtu.be/DwvD4bzUPfA

これは曲の勝手な改変ということで、問題あるとまずいので早めに消します。

投稿: TARO | 2012年1月14日 (土) 12:29

euridiceさん

私もこの2日眠れなかった人の気持ち、すごくよくわかります。
私はまだ鳴ったことはないんですけども、インタビュー中とかスタジオに入っている時とか、「あ、マナーモードにしてない!」と気づいて、こっそり操作したりということはしばしばあります。だからそのうちコンサートでもやってしまうような気がするんですよね。最近すごく注意散漫になってるので。

女の人はハンドバッグにいれておくと、万一鳴ってもあまり大きく周囲に聞こえるということはないと思うんですが、私の場合は常にポケットですので…。そのうちコンサートやオペラの時にはコインロッカーにいれておく習慣をつけようかなとも思うんですが、それだと今度はロッカーに入れることも忘れて、マナーモードにしてない携带をもったままということも考えられて…

私はiPhoneは持ってないんですけど、なんかマナーモードにしてても音が鳴るアラームがあるみたいなんで、ご注意下さいね。

投稿: TARO | 2012年1月14日 (土) 12:51

助六さん

ひ、酷いですねえ・・・
フランス人の驚きのマナーについては何度も教えていただいてて、慣れっこになったつもりでしたが。
ブレンデルとかクリスティとか聞きに来る人達って、それなりにコンサートに行き慣れてる人達と思ってましたが…。

>欧米の平土間聴衆の典型という感じ。

そうなんですか。これもかなり意外です。「40代半ばまではコンサートに来る習慣はなかった人」というのが、日本とは完璧に違いますね。日本だと歌舞伎や能・狂言、文楽の類はある程度の年令になってから、聴き始めるという人が多いと思うんですが、それと似たようなものと考えれば良いんでしょうか?

ギルバートはたまたまじゃなくて、実力通りじゃないでしょうか。ニューヨーク・フィルのレベルが凄く高くなってるという評はよく読みますね。前任者のマゼールの力もあるのかも知れませんが、ギルバートがうまく受け継いで、しっかりした音楽作りをやってるということじゃないかと思ってます。
ただあくまでもライヴ録音で比較すると、同じギルバートでもNYフィルよりもベルリン・フィルを振った時のが断然凄かったですが。

>平土間最前列

ハッ!バーンスタインの9番の時は最前列近かったような…
あと、デヴィーアを聞くときは2回に1回は最前列狙いです。音は上を通りすぎていくんですけど、一歩でもデヴィーア様のおそばに。。。。

投稿: TARO | 2012年1月14日 (土) 13:17

19 Musicians、ありがとうございます(*^-^)
iPhone奏者が一人必要なんですね!
それでもやはり、全体のリズムと外れているからイラっときてしまいます。

お風邪を召されませんように…

投稿: ayame | 2012年1月14日 (土) 23:30

ayameさん

ずっと舞台上に座ってて、「いったいあいつは何やるんだ?」と聴衆が不審に思った頃に、おもむろにポケットからiPhone を取り出して…という感じじゃないでしょうか。演出としては。
でもたしかにリズムとあわないとただの騒音ですね。もしかするとiPhoneには他にも色んなリズムの音が入ってるんでしょうか。緻密に計画していけば、可能かも。

>お風邪を召されませんように…

ありがとうございます。12時間寝たらだいぶ良くなりました。

投稿: TARO | 2012年1月15日 (日) 12:21

このテのハプニングは世界中できっとあるだろうなと思っていました。僕は、母親譲りの心配性なのでコンサートにはiphoneを持って行きません。(電源を切っても心配なのです)それにしても、アラン・ギルバートのつぶやきは洒落てますね、恐れ入りました。ちなみにマリンバトーンは目覚ましとして毎日聴いております。

投稿: shinkunnopapa | 2012年1月16日 (月) 22:44

shinkunnopapaさん、こんばんは。

本当に電源を切っても心配ですよね。昔は電源を切っても電池切れになると音が鳴り出すという携带があったそうなんですが、そんな話を聞くとなおさら…
それにしても、携带の電波は遮断する音楽会場も増えてきたようですが、アラームというのは盲点でした。

>アラン・ギルバートのつぶやき

日系といっても、さすがニューヨーク生まれのニューヨーク育ちですよね。
日本で育ってたら、なかなかこうはいかないかと。

投稿: TARO | 2012年1月16日 (月) 22:58

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