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2012年3月13日 (火)

閉塞感という名の幻想・2

20120312 昨日も書いたようにこの相続税100%あるいは遺産全額徴収が「八策」に乗ることはおそらくないだろうと思います。
しかし、これは経済活性化策として考えられているわけですが、財源の確保という意味でも完全に取り下げるわけにはいきません。

「ベーシックインカム」(以下BI)はいわば「八策」の目玉商品ですからもはや取り下げ不能。しかも財源は明記しなければなりません。貯蓄税は引き下げたようなので、相続税は捨てられないところです。『現在の基礎控除額を維持したまま、相続税の累進課税を強める(たとえば昨年の民主党の増税案でささやかれた最高80%とか)』というのが、もっとも可能性の高い落としどころかと思います。

もし遺産全額没収になったとして、手軽な逃げ道は2つあります。いずれも相続税がかからない非課税財産に逃げるというもの。

その一つは仏壇やお墓。仏壇と書くと語弊がありますが、ようするにどの宗教でも祭具、礼拝用の道具などはどんなに高価なものでも非課税です。純金でダイヤを散りばめた位牌とか作っておくと良いかも知れません。(仏像だと美術品とみなされてしまうかも知れません。ちょっと判りませんが。)

もう一つは生命保険。受取人一人あたり500万円まで非課税ですので、生命保険に入ってれば、奥さんと子供7人の計8人の受取人がいる場合には、4000万円まで非課税で財産を残せます。

つまりこの相続税100%が実施された場合は、宗教団体と生命保険屋には大きなビジネス・チャンスが巡ってくることになります。外資系の保険会社に日本人の資産が食いつぶされる有様が目に浮かんできますが、橋下さんはTPP賛成派だし、それでよしとしてるのでしょう。

ところで2月の「八策」項目発表の時には、維新の議員が年間100兆円を超えるBIの財源をどうするのか質問されて「考えてなかった」と答えたそうですが、レジュメによればどうやら種々の社会保障制度を廃止することと税制の変更によって、その財源にあてるように読めます。(実際どう考えてるのかはわかりません。常に斜め上を行く人達なので。)

①現行の年金制度を清算
②資産課税
③保険料は掛け捨てで強制徴収
④健康保険制度の見直し(実質廃止?)
⑤生活保護制度の廃止
⑥失業保険の廃止

などが挙げられています。
生活保護と失業保険、年金が一本化されてBIに移行するとなってるので、実質的に廃止されてそのかわり1人7万円程度と見積もられているBIが支給されるということになります。

これは最悪だと思います。たとえば生活保護。いったい大阪でどのぐらいの人数が不正受給し、どのぐらいの金額が不当に払われているのか、私にはわかりません。しかし大阪の事例で全国をはからないでいただきたいと思います。もちろん働けるのに怠けて生活保護を受けてるという人も、都道府県を問わずどこにもいるでしょう。しかし受給者のメインはどう考えてもそうじゃないと思います。(宮城県の場合だと昨年は、津波で総て流され職も失った人が生活保護を受給したケースなどがあります。一人病院で知り合った人がいますが、生活保護制度に非常に感謝していました。)

(大阪以外の)どの自治体でも生活保護を受けてる人というのは、子どもがまだ成人してないのに母親が虚弱で働けない母子家庭とか、病気や怪我で働けなくなり職を失った人などが、多い――かどうかは判りませんが、主要なケースとして考えられると思います。後者の場合、現状であれば失業保険に加え健康保険の傷病手当金や、さらに障害があれば障害年金(同一の疾病の場合は傷病手当とWでもらうことは出来ないが、傷病手当の方が高ければ差額が支給)が出ることになります。そしてその後も就業が無理な場合、生活保護を受けるということになるかも知れません。

維新の政策だとこの人には失業保険も出ないし、障害年金も、生活保護もでない、ひたすら月7万円のBIでやっていけということになります。ものすごく節約すれば可能かもしれませんが、ひとつ絶対に節約できないものがあります。医療費です。

④の健康保険制度について(実質廃止?)と書いたのは私の解釈で、レジュメにはそう書いてあるわけではありません。「医療保険の一元化」で「市場原理メカニズムの導入」と書かれています。これは普通に解釈して、アメリカのように民間の保険会社による医療保険に入れということなんだろうと思います。
日本人の資産がアメリカの保険会社に食い荒らされるようすが目に浮かんできますが、橋下さんはTPP賛成派なので、それでよしとしてるのでしょう。(面倒なのでコピペしました。)

上に例をあげた病気・怪我で職を失った人は、何しろ会社をクビになるほどなのですから、ほぼ確実に病院に通ってるか入院してるはずです。医療費は現行の健康保険制度のもとですら最低でも1~2万円はかかってるでしょう。このシステムになったとして民間の医療保険に入ってなければ、3万から6万かかりそうです。

家賃がかなり郊外の4.5畳一間で月3万円だとしましょう。水道光熱費がぎりぎり節約して1万円。医療費が3万円。これでBI1か月分の7万円いきます。食費も電話代もだせません。どこが最低生活保障、どこが複雑化したセイフティネットを一元化なのでしょうか。こんなのセイフティネットなんて言いません。

レジュメでは資産のある老人のためにリバースモーゲージ(Reverse mortgage )の制度化も提案されています。これについてはよく知らないので Wikipedia に頼りました。これは「自宅を担保にして銀行などの金融機関から借金をし、その借金を毎月の年金という形で受け取るもの」。維新がどういう形を想定してるのか判りませんが、契約満期時一括返済するという契約の場合には死ぬ前に満期が来た場合、住宅は銀行に差し押さえられるというリスクがあるということです。また当然担保割れというリスクも抱えます。

というとご記憶の方も多いと思います。フランスにおける(契約満期時=死亡時という契約を結んだ場合の)悲喜劇を。以前に助六さんからジャンヌ・カルマンの例を教えて頂きました。

リバースモーゲージは自治体が生活保護に代わって福祉的にあっせんするものや、銀行などの金融機関が富裕層向けに行うものがあるようです。どうも、それ自体が悪いわけではありませんが、一種の金融商品であり多少バクチ的な要素はぬぐえませんね。制度化というのがどうういう意味での制度化なのかがわかりませんが、それを強制されるような制度化だったら、断固拒否したいです。

そういえば橋下市長は、「ギャンブルを遠ざける故、坊ちゃんの国になった。小さい頃からギャンブルをしっかり積み重ね、全国民を勝負師にするためにも、カジノ法案を通してください」とか言ってましたね。たしかに「一生使い切り型人生モデル」と整合性はあります。
(続く)

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コメント

そもそも提案の方がつぎはぎですので、とてもこれらについて書くのは面倒かと思います。BIに関してはご指摘のように、ノーベル経済学賞フリードマン教授のアイデアでドイツでも海賊党の売りとなっていますが、社会保障の簡略化と小さな政府が基本で新たな財源を必要としないというのが味噌かと思います。その点だけでも他の増税の趣旨が矛盾している場合もあって、まともに付き合えないというのが多くの人の本音かと思います。その他連邦制も二院制以上に複雑で、本音の共和制も天皇主権で隠されています ― ヴァイマール共和国憲章の所有の制限から国家社会主義労働党の勃興に似ているとされるところで、恐らく強く意識されているでしょう。

大雑把に評価すると有権者のうちの低所得者・低賃金層をターゲットにしていて、ポルポト並の文化大革命が用意されていますが、そもそもそれで失うものが無い社会層がどれほど投票所に行くかが鍵でしょうか?個別の政策の支持の述べ数はかなり大きく、アンチイデオロギーの政策のためイデオロギー学者が口を出せないような戦略となっており、権力奪取には手段を選ばずという印象です。

投稿: pfaelzerwein | 2012年3月14日 (水) 04:51

pfaelzerweinさん

そうですよねぇ。つぎはぎでイデオロギー皆無というか全然正反対のイデオロギーを色々取り込んでいるので、何がなんだか判らない。でも橋下氏のいつものパターンだと、そういう批判に対しては「イデオロギーに国が救えたことがあったか?」などとうそぶくに違いありません。

一見、公務員を否定し、小さな政府を志向しているようにみせ、事実はすべてを手に入れる巨大な政府と、それを管理する公務員・官僚天国という結果にもなりますね。このレジュメだと。さすがにこれでは正式に発表された段階でテレビ・新聞でも批判が巻き起こるとは思うのですが。
大阪府の維新の議員というのは自民党から移った人も多く、本音はこんなのお話にならないだろうと思うんです。でも一時の権力に酔ってるんでしょう。本当に情けない。

>ヴァイマール共和国憲章の所有の制限から国家社会主義労働党の勃興に似ているとされるところで、恐らく強く意識されているでしょう。

国民の支持があって出てきたのだということが、いまなら実感として理解できます。新聞のアンケートだと「維新に期待する」という人が60%もいますから。

投稿: TARO | 2012年3月14日 (水) 13:34

世の中、なんだか気色悪い状況になったというか、もうかなり前から進行中だとおもいますが、ますます加速しそうで、生きている間にどうかなっちゃうかもって気がしてきます・・

>60%
ですか。オソロシヤ〜〜です。
コイズミなんたらの時も支持者のほうが多数派だったですよね。

投稿: edc | 2012年3月14日 (水) 14:19

euridiceさん

ですよねぇ。もうなんか具合が悪くなってきそうです。最近はヤツの顔がテレビに出てくるとすぐ消すことにしてます。宮根アナなんかが「いやあ、凄いスピード感ですねえ!」とかヘラヘラお追従言ってるのも、気分が悪くなるし。

別の新聞の「日本の指導者として期待される人」というのでは20%ぐらいでダントツ1位でした。これを1位ということで嘆くべきか、80%の人はちゃんとみてると安心すべきか、判りませんけども。小泉=竹中路線というのは日本をアメリカの求めるように作り替えるというものでしたが、この人のはそんな程度じゃ収まらなくて、日本を完全に破壊することを目指してますからね。少なくとも八策のレジュメを見る限りでは。
まあ、私は幸運にもその前にたぶん寿命がきちゃうんですけどね…

投稿: TARO | 2012年3月14日 (水) 20:28

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