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2012年5月27日 (日)

吉田秀和さんが死去

20120527_yoshidahidekazu フィッシャー=ディースカウのショックからまだ立ち直れてないというのに、畑中良輔さんに続いて、吉田秀和さんまで亡くなってしまいました…

亡くなられたのは22日のことで、急性心不全とのことです。98歳でした。

なんと言ったらいいのでしょうか。
一般的には98歳といったら大往生と言われるんでしょうけれど、なんだかこの方には大往生などという大仰な言葉は、およそ似合わないような気がします。勝手な想像ですが、きっと消えるようにスーッと亡くなったのではないかと。

それにしても2003年にバルバラ夫人が亡くなられた後、もう一度気力を取り戻して仕事に取り組み、それから9年。この方もまた「知の巨人」と呼ばれるにふさわしいのではないかと思います。

70~80年代には――他の評論家の方に比べるとまれでしたが――オペラやコンサートの会場で、たまに吉田さんを見かけることがありました。

81年のクライバーの「オテロ」の休憩時間には、私がロビーの飲食コーナーでお寿司を食べていたら、吉田さんご夫妻が飲み物を持ってやってきて、相席になってしまいました。有名人だし話しかけたりしたら迷惑だろうと思い、軽く会釈するだけにとどめましたが。
そういえば私が食べていた握り寿司弁当の海苔巻きが、ノリだけ袋に入った組み立て式の難解なやつで(コンビニお握りの複雑系みたいな)、「なんだこりゃ」という感じでクビを傾げていたら、バルバラさんがニコニコ笑ってこっちを見ていたのを思い出しました。

いまごろ天国で愛するバルバラ夫人と再会できたでしょうか。謹んでご冥福をお祈りいたします。

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コメント

同じ日にドミンゴを聞き、吉田夫妻を見かけ、恐らく同じように民音で並んでチケットを購入していたとは。

投稿: pfaelzerwein | 2012年5月28日 (月) 06:32

吉田さんは2度お見かけしたことがあります。
一度は81年のドレスデン歌劇場初来日での「ばらの騎士」、横浜の県民ホールでの公演でお一人でした。終演後お席の方を振り向いてみたら早業で帰られてました。吉田さんはその頃よく「もう十分と思いアンコールは聞かずに帰った」とか言ったり書かれたりしてましたね。
もう一度は上野の文化会館でバルバラさんとご一緒でしたが、何の公演だったのかは一向に思い出せません。二期会のサヴァリッシュ指揮「魔笛」だったような気も、都響定期だったような気もするんですが。

「音楽展望」は最後まで続けられていたんでしょうか。最後まで現役だったのなら、世界的にも現役クラシック批評家の最長老だったかもですね。

70年代にNHKが放送したブーレーズとの対談はドイツ語だったような。

投稿: 助六 | 2012年5月28日 (月) 07:35

pfaelzerweinさん

なんと!では30年前に、NHKホールで pfaelzerwein さんとすれ違ってたかもしれないのですね。なんというネットの不思議。

もっとも当時も私は仙台に住んでいましたから、東京の公演のチケットはすべて電話か封書予約>郵送でした。たしかあの頃は仙台にはまだ「チケットぴあ」も「チケットセゾン」もなくて、東京のチケット入手は郵送以外に手段はなかったような。

投稿: TARO | 2012年5月28日 (月) 13:14

助六さん

朝日新聞の「音楽展望」は季刊になりましたが、続けられていましたし、「レコード芸術」の『之を楽しむ者に如かず』はほぼ毎月連載されてました。しかもNHK-FMでは「名曲のたのしみ」も放送されていて、1時間の番組を毎週という恐るべき仕事量。「名曲のたのしみ」は先週の土曜日も放送されました。でも放送時点ではもう亡くなられてたんですね…

「名曲のたのしみ」は助六さんも、日本にいらした頃はお聞きになったことがあるかと思いますが、一人の作曲家の録音入手可能な全作品をほぼ作曲順に放送していくもの。今はラフマニノフを取り上げていたところでした。
鎌倉のご自宅にNHKのスタッフが伺って、何回分かまとめて収録するという形なので、このあともまだ放送はあると思います。

ということでバリバリ現役だったわけで、そういう意味でも単に高齢の有名人が亡くなったという以上の衝撃ですねぇ。

ブーレーズとの対談番組は見ませんでしたが、二人が喋るとやはりドイツ語が一番なんですね。いわゆる現代音楽とか、あるいは音楽の未来とかについて、年齢は違いますが同時代の美意識を持った二人ということなんでしょうか。

投稿: TARO | 2012年5月28日 (月) 13:33

何故か絶対に亡くならない人みたいに感じてたので
ひたすらショックです。

投稿: KEN | 2012年5月28日 (月) 23:45

KENさん

私も少なくとも100歳までは、現役で活躍されるだろうと思ってました。
あの何があっても激することも、たじろぐこともなさそうな穏やかで冷静な語り口を聞いてると、この方が急逝(かどうか正確には判りませんけども)するというのは、なんだかとても考えられないことのような気がします。もちろんただの思いこみなんですけどねぇ…

投稿: TARO | 2012年5月29日 (火) 00:42

「名曲の楽しみ」は私が知ってる頃は、吉田さんの注意を引いたレコードを随意に取り上げる談話エッセイ的な企画だったように思います。
「全作品・作曲順」というシステマティックな構成は大変魅力的ですね。しかもラフマニノフとは。

最後までバリバリの現役だったんですね。
フルトヴェングラーの実演経験者など、欧州批評家でも今はもう僅かでしょう。
私は2年前スカラのガレリアでフルヴェンのヴァーグナーをスカラで聴いた爺さんに会ったことがありますが。
カラスを聴いたファンはパリでもまだかなりいますけど。

私は正直なところ吉田さんとは演奏上の趣味はあまり合わず、あの「ひねった座談調」みたいな文章もピタリと来る方ではなかったんですが、自己の音楽経験を寄せ手からめ手で文章に形象化する筆運びには瞠目させられましたし、晩年のレコ芸への寄稿(私がこちらの図書館等で読む手立てがあったのは「今月の1枚」の時代。でも『之を楽しむ者に如かず』なんて相変わらず覗かずにはいられない魅力的なタイトル!)で垣間見せた過ぎ去った時と音楽への痛切な愛惜の思いには鳴かされました。確かブレンデルのシューベルトに関する文章で、コピーして今もどこかにあるはずですが、探すのが面倒。

投稿: 助六 | 2012年5月30日 (水) 07:13

助六さん

「名曲の楽しみ」では当然モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、ブラームスといった吉田さんが好きな作曲家は全部網羅していて、最近はプーランクだとかラフマニノフとかまで及んでました。ただオペラ全曲だけは時間の都合で取り上げられなかったようですが。
もうこんな企画を実現して視聴者の興味を惹きつけうる評論家や音楽エッセイストはいませんね。強いて言えば金子健二さんぐらいでしょうか。金子さんの語り口は実に魅力的で、ラジオ向きですからね。(いえ、決してテレビ向きじゃないと言ってるわけではありません。)

>「ひねった座談調」

思わずニヤリとしてしまいました。でも私は決して嫌いじゃなかったです。
「之を楽しむ者に如かず」では、新しいアーティストも積極的に取り上げていましたね。やはり最後までそれが使命の一つだと考えていたんでしょうかね。
吉田さんの文章で世評には高かったけれど、私がいまひとつに感じてたのは、美術に関するものですね。新しさとか刺激とかはないし、かといって文学的なエッセイとして読むにはあまりにも淡彩すぎるというか…

投稿: TARO | 2012年5月30日 (水) 13:48

水戸芸術館のコンサートでお見かけしました。演奏会にはたびたび見えていたようです。
鎌倉からはるばる水戸までいらっしゃるのも大変でしたでしょうに。

今年1月の水戸室内管公演では、初日以外の小澤さんの指揮が開場直前にキャンセルされ、関係者の挨拶に対して会場に集まったファンから、なぜもっと早く知らされないのか、と野次が飛んだようですが、同じ会場にいらした吉田さんが客席から釈明されてその場を治めるというシーンがありました(チェリストの宮田大さんのドキュメンタリー番組より)。吉田さんの存在の大きさを確認させられる出来事でした。

ご存知かもしれませんがEテレで追悼番組があります。6月2日(1日深夜)前0:00~
かつてTAROさんも取り上げられていた2007年7月のETV特集が再放送されるということです。

「名曲のたのしみ」は年内いっぱい放送されるようですね。可能な限り聴きたいと思っています。

投稿: ayame | 2012年5月31日 (木) 00:46

ayameさん

水戸にはしばしば行かれてたんですか。それは大変だったことでしょうね。
もっともパワーのある人というのは、普通人には想像できない能力をもってはいますけども。以前にちょっと書いたことがあるかもしれませんが、10年ちょっと前に仙台市内で日野原先生のインタビューに立ち会ったことがあるんですが、「昨日ニューヨークから帰って来ました」と言われて仰天したことがあります。昨日NYから帰って、今日は仙台って…

>吉田さんの存在の大きさを確認させられる出来事でした。

ああ、そんなことが。でも吉田秀和さんになだめられたら、おとなしくなりますね、やはり。
まあ、聴衆の質にもよるのかもしれませんけどね。昔、スカラ座でカバリエが「アンナ・ボレーナ」をキャンセルした時、大騒ぎの観客をシミオナートがなだめようとしたら全然おさまらず、逆に「ひっこめババア!」とかいう罵声までとんだなんて話がありますから。

>「名曲のたのしみ」は年内いっぱい放送されるようですね。

そうなんだそうですね。収録した分と、原稿で残された分とあるという話ですが、数カ月先のぶんまで原稿を書いてるというのが、また驚き。私は明日締め切りの原稿がまだできません…

投稿: TARO | 2012年5月31日 (木) 01:13

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