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2012年6月 5日 (火)

フィッシャー=ディースカウの名盤(4)モーツァルト、ワグナー、R・シュトラウスの名盤(後)

20120601_dfd フィッシャー=ディースカウにとってワグナーは重要な役だったのでしょうか?もちろんドイツ人のオペラ歌手だからといって、皆ワグナーを大事にしてるというものでもないとは思いますが、FDの場合どうもよく判りません。バリトンが歌うほとんどの役をメジャー・レーベルで録音してる歌手なんてなかなかいませんし(バス・バリトンは何人かいそうです。テオ・アダムとか)、プライなどよりは遥かにワーグナーへの親和性も高そうです。でもなんとなく、自身にとって重要なレパートリーとは考えてなかったような気がするんですよね。

たぶん「この役にかける!」みたいなところがないからだと思うんですけども。例えば上に挙げたテオ・アダムだったら、バス/バス・バリトンの重要な役はほとんど歌ってますが――アルベリヒまで――それでもやはり「ウォータンとザックスにかける!」、みたいな部分があると思うのです。フィッシャー=ディースカウの場合、ウォータンでもグンターでも同じようにハイレベルの歌唱で、良く言えばどんな役でも手抜きをしないとは言えるんですが、でもなにか熱く盛り上がらない感じもついて回って…

とはいえその歌唱が誰と比べても常に最上級のものであることは言うまでもありません。(フィッシャー=ディースカウの主要なワグナー録音の中では、私はフリッチャイ指揮の「さまよえるオランダ人」とケンペ指揮の「ローエングリン」は聞いてませんが。)
前にとりあげたフルトヴェングラーの「トリスタン」を別格とすると、中でもやっぱり凄い…と思わざるをえないのは、ショルティ盤「パルシファル」のアンフォルタスでしょうか。この役こそフィッシャー=ディースカウの歌唱力を待ってたのだという気がします。
今はカラヤン盤の影に隠れた感じになってますが、このショルティ盤は名盤です。何と言っても――といってフィッシャー=ディースカウじゃない人の名前が出るというのも、どうかとは思いますが――ルードウィヒのクンドリーが凄いのです。またグルネマンツのゴットロープ・フリックも当時は意外なキャスティングのように思いましたが、素晴らしい歌唱。他のキャストも完璧に揃ってます。おまけに端役に過ぎない花の乙女にわざわざポップとキリを招いているのです。

キャリアの後期にはフィッシャー=ディースカウはワーグナーはほとんど「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のハンス・ザックス一本に絞ってたんじゃないでしょうか。ヨッフム指揮のスタジオ録音がDGにありますが、もし入手可能ならサヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場の79年ライヴはオールスターキャストで素晴らしいです。夫妻共演です。

ウォータンは「ラインの黄金」がカラヤン指揮で全曲録音されてますが、残念ながら「ワルキューレ」はありません。でも『ウォータンの告別』だけならクーベリック指揮のアリア集で聞くことが出来ます。アナログ時代には好きでしょっちゅう聞いてました。調べたら今は廃盤みたいです。

R・シュトラウスも勿論、フィッシャー=ディースカウの歌を待っていたと言えるでしょう。代表盤にはカイルベルト指揮の「アラベラ」と「影のない女」、ベーム指揮の「サロメ」「カプリッチョ」、映像版の「エレクトラ」などがあります(「エレクトラ」には同じベーム指揮のCDもありますが、私は聞いたことがありません)。

どれも最高ですが、中でも「アラベラ」はタイトル・ロールが理想的なアラベラ歌いと言われたリーザ・デラ=カーザなこともあって、今もってこの曲の決定盤となっています。またユリア・ヴァラディ夫人と共演したサヴァリッシュ指揮のもオルフェオから出ています。このCDは私は聞いてません。同時期に同じスタッフ・キャストで上演された時のライヴが昔NHK-FMで放送され、そちらをエアチェックしてしまったので。それに準ずる録音だったとしたら、素晴らしい演奏です。アラベラはどちらもヴァラディ、ツデンカはCDはドナート、FMの方はマティスが歌っています。

「カプリッチョ」は伯爵を歌ってるベーム指揮のDG盤の他に、サヴァリッシュ指揮のEMI盤もあってこちらでは詩人オリヴィエを歌っています。このEMI盤は私は聞いてないんですが、こちらを高く評価する人も多いようです。

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コメント

サヴァリッシュのマンドリカは表現の幅が大きく素晴らしいです。カイルベルト盤はYOUTUBE映像で見ましたが、それに比べると大分遠慮がちに感じました。

もしかするとああしたファルセットに至る表現の幅もヴァークナーに求められるものとは少し違うのかなとも感じましたが、どうでしょう?

投稿: pfaelzerwein | 2012年6月 6日 (水) 04:27

pfaelzerweinさん

カイルベルトの「アラベラ」って、全曲が映像で残ってたんですね!
YouTubeにいってみて検索したら、Keilberth (Complete) などと書いてあるので、「え?コンプリート??」。時間をチェックすると、なんと2時間36分。今、ちょっと有頂天気味で見ているところです。現時点ではまだ始まって20分ぐらいなので、フィッシャー=ディースカウは登場してませんけども。(時間がないので、1幕途中まで見たら残りは明日にまわさざるをえないのが残念…)

>もしかするとああしたファルセットに至る表現の幅もヴァークナーに求められるものとは少し違うのかなとも感じましたが、どうでしょう?

ああ、なるほど。他の多くの名ワーグナー歌手たちとかなり違う歌唱だなとは思ってましたが、他との違いと言うよりはもっと本質的な問題なのかも知れませんね。それに対してシュトラウスでは音楽との間に齟齬はいっさい感じないというか、ただひたすら聴き惚れるばかりですが。

投稿: TARO | 2012年6月 6日 (水) 14:12

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