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2012年12月

2012年12月31日 (月)

この1年

20121231_jozenji1 あと2時間ちょっとで、今年も暮れようとしています。いまごろテレビでは紅白歌合戦など、やっているんでしょうか。そういえばもう何年も見たことありません。

去年は史上最悪の一年が過ぎて新たな年に変わるのが本当に嬉しかったのですが、今年はそうですねぇ…。別に重病なわけでも、いますぐ死にそうなわけでもないのですが、正直言って「また1年生き延びてしまった…」という気持ち。少し鬱傾向にあるのかもしれません。病気になる前の私は鬱とか悲観とか落ち込みとかとは全く無縁だったので、滅入った時の対処の方法をまったく持っていないんですよね。五十数年間、明るく暢気に生きてきたツケがいまドッと…

さて、今年は音楽関係だけに限っても多くの著名な方々が亡くなりましたが、中でも畑中良輔さんと吉田秀和さんという二人の評論家の死去は、やはり時代の終わりを感じずにはいられません。

また先週入ってきたニュースですが、今月16日にNHKの音楽番組などでもおなじみだった中野博司さんが亡くなられたそうです。

中野博司氏 78歳(なかの・ひろし=元慶応大学教授)14日、肺炎で死去。告別式は近親者で済ませた。喪主は妻、幸子(さちこ)さん。
 西洋音楽史が専門で、日本のハイドン研究の第一人者としてドイツ・ケルンのハイドン研究所理事を務め、NHK音楽番組の解説者としても活躍した。著書に「ハイドン交響曲」など。

(読売新聞)

ご冥福をお祈りいたします。

政治・経済・社会の分野ではもちろん総選挙が今年の最大の話題といって良いのでしょう。自公については予想通りでしたが、維新が比例であれほどの票を集めたというのは、私には非常な驚きでした。

他党からの批判で後に撤回しましたが、最低賃金の廃止など維新の方針は格差の拡大を明確に政策に打ち出しています。過酷な競争社会による一部の勝者と大多数の敗者という図式は、すぐお隣りの国に財閥だけが肥え太り一般の国民は多額の借金や高い失業率(※)にあえいでいるという例があり、それを私はグローバリズムの餌食になった見事な失敗例と思っていたのですが、過去にこのブログで見てきた政策も合わせて考えれば、維新はなぜかそれを失敗例ではなく成功例と考え、目標としています。

(※ 韓国の失業率は日本などとは全く計算方式が違う独自のもので、なんとニートは数字に含めないのだそうです。政府が発表する公式の失業率は3%台ですが、民間研究機関と統計庁が別に計算した「事実上の」失業者は13%近くになるのだそう)

誰が何を主張しようと、どの党がどんな主張をしようと思想・言論は自由ですし、それ自体は勝手なわけですが、私が驚愕するのはそれを人々が支持するということです。1年前ならまだ判ります。橋下氏の実績として挙げられていたのは公務員叩きと国旗・国歌条例だけでした。何か改革者のイメージを持たれていたのかもしれません。しかし選挙の時点では維新の政策は十分に知られていたのではないでしょうか?

3年前の民主党のように絵に描いた餅を並べ立て、後で撤回につぐ撤回というのであれば、有権者が騙されるのもやむを得ないかもしれません。嘘つき呼ばわりされるのも当然でしょう。でも維新は明確に競争社会・格差社会を(すなわち暗に韓国のような国民総不幸社会を)志向しますよと打ち出しているわけですから、それを支持する有権者があれほど数多くいたのだと考えるしかありません。恐ろしいことです。

また橋下徹氏個人についても、口が達者なだけの中身の無い人、その政治手法は示談弁護士そのものというのも十分に知れ渡ったと思います。竹島共同管理発言など典型的な示談弁護士の考え方でしょう。
彼の弁護士的やり方は、クライアントの意向を十分に踏まえて、最もクライアントが利益を得るような方法で折衷案を探っていくというのがパターンだと思いますが、政治は示談交渉ではありませんから、それが有効に働くときもあればそんなやり方が許されない時もあります。そこがどうも分かってないのですね。

そして仮にそのような方法論を認めるとしても、橋下氏の一番の問題点はクライアントが市民ではないことだと思うのです。普通なら選挙で選ばれた首長なのだから、クライアントとは大阪府民なり大阪市民なりと考えるべきだと思うのですが、彼の考えはそうではありません。有権者については「選挙で選ばれたのだから白紙委任」であって、全面的に市長のいうことに従えと。クライアントとは市民ではなく、どうやら彼の政治活動を支える企業や団体(マルハンであったりソフトバンクであったり)がそうであるらしいということが問題だと思うのです。まあその手の企業とどの程度濃い繋がりがあるのかということについては、私なんかが知る由もないのですが…

そしてそれでも橋下徹を支持する、期待するという人があれほど多かった…クラクラしてきます…

う~、なんだか維新について書き始めるとついムキになって止まらなくなってしまいました。大晦日だというのに。

20121231_jozenji2 画像は師走恒例の「光のページェント」。青葉区定禅寺通りの写真です。昨年は沿岸部の倉庫に保管していたイルミネーションが津波で流されてしまい、全国からの助けでようやく開催できたんでした。ことしは自前で用意できたようです。ページェントの点灯式は、れいのアウターライズ地震が起きて津波警報が出された、7日の夜。仙台放送が点灯式の中継番組を流して、「まだ避難してる人がいるのに」と、ネットの批判を浴びていました。

仙台の街は震災前とずいぶん変わって来ました。市の中心部は新しいビルが立ち、華やぎを取り戻しています。宮城野区では、赤紙マンションの取り壊しも進み、更地になった住宅地も増えました。先日の地元紙によれば、被災者の生活再建は全然進んでないとか。

2013年は宮城全体も私個人も、元気に活動できる一年になってくれると良いのですが。
それでは皆様この一年本当にありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎え下さい。

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2012年12月14日 (金)

ゴールデン・グローブ賞のノミネーション発表

20121214_gg アカデミー賞の前哨戦などとも言われて注目される、ゴールデン・グローブ賞の候補が発表になりました。ご存知のように作品賞と主演賞はドラマ部門とミュージカル/コメディ部門にわかれています。
最多候補はスピルバーグの「リンカーン」で7部門。

作品賞(ドラマ)
 「アルゴ」(1979年のイランのアメリカ大使館人質事件に取材したベン・アフレック監督主演のポリティカル・サスペンス。10月日本公開済)
 「ジャンゴ 繋がれざる者」(来年3月公開予定、ジェイミー・フォックス主演、タランティーノ監督の西部劇。ディカプリオが悪徳農園主を演じるらしいです)
 「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(アン・リー監督の新作で1月公開。予告編見る限りではかなり面白そう)
 「リンカーン」(スピルバーグ監督、ダニエル・デイ・ルイス主演の話題作。日本は来年4月公開予定)
 「ゼロ・ダーク・サーティ」(「ハート・ロッカー」でアカデミー賞を受賞したキャスリン・ピグロー監督の新作。主演はジェシカ・チャスティン)

作品賞(ミュージカル/コメディ)
 「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(2月公開予定、「恋におちたシェイクスピア」のジョン・マッデン監督。ジュディ・デンチやらマギー・スミスやら)
 「レ・ミゼラブル」(ご存知レ・ミゼ。21日からロードショウ。)
 「ムーンライズ・キングダム」(「ダージリン急行」のウェス・アンダーソン監督。2月公開予定のコメディ)
 「砂漠でサーモン・フィッシング」(ラッセ・ハルストレム監督の新作。またまたユアンの主演)
 「世界にひとつのプレイブック」(2月公開予定、デイヴィッド・O・ラッセル監督。ブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンス。助演でデ・ニーロが出てるみたいです)

主演男優賞(ドラマ)
 ダニエル・デイ=ルイス  「リンカーン」
 リチャード・ギア  「Arbitrage」
 ジョン・ホークス  「The Sessions」
 ホアキン・フェニックス  「ザ・マスター」
 デンゼル・ワシントン  「フライト」

主演女優賞(ドラマ)
 ジェシカ・チャステイン  「ゼロ・ダーク・サーティ」
 マリオン・コティヤール  「君と歩く世界」
 ヘレン・ミレン  「ヒッチコック」
 ナオミ・ワッツ  「インポッシブル」
 レイチェル・ワイズ  「Deep Blue Sea」

主演男優賞(ミュージカル/コメディ)
 ジャック・ブラック  「Bernie」
 ブラッドリー・クーパー  「世界にひとつのプレイブック」
 ヒュー・ジャックマン  「レ・ミゼラブル」
 ユアン・マクレガー  「砂漠でサーモン・フィッシング」
 ビル・マーレイ  「Hyde Park on Hudson」

主演女優賞(ミュージカル/コメディ)
 エミリー・ブラント  「砂漠でサーモン・フィッシング」
 ジュディ・デンチ  「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」
 ジェニファー・ローレンス  「世界にひとつのプレイブック」
 マギー・スミス  「カルテット!人生のオペラハウス」
 メリル・ストリープ  「Hope Springs」

助演男優賞
 アラン・アーキン  「アルゴ」
 レオナルド・ディカプリオ  「ジャンゴ 繋がれざる者」
 フィリップ・シーモア・ホフマン  「ザ・マスター」
 トミー・リー・ジョーンズ  「リンカーン」
 クリストフ・ヴァルツ  「ジャンゴ 繋がれざる者」

助演女優賞
 エイミー・アダムス  「ザ・マスター」
 サリー・フィールド  「リンカーン」
 アン・ハサウェイ  「レ・ミゼラブル」
 ヘレン・ハント  「The Sessions」
 ニコール・キッドマン  「The Paperboy」

助演賞の顔ぶれが酷いですね。全員主演賞候補になってしかるべき人達じゃないですか。こういうんじゃなくて主役は張れず、でも脇役で頑張ってる人を候補にして欲しいのに。

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2012年12月13日 (木)

デラ・カーザ、ヴィシネフスカヤ死去(後)

20121213_vishnevskaya ガリーナ・ヴィシネフスカヤ。旧ソ連出身のソプラノ歌手。
あるいは生前から「生ける伝説」と呼ぶべきだったのかもしれない、この不世出のソプラノ歌手がついに亡くなりました。本当に伝説になってしまった、と書くべきでしょうか。

ヴィシネフスカヤの人生は大きく2つに分かれます。
最初の人生は1926年レニングラードに生をうけ、オペラ歌手となり、ソ連が生んだ最高のソプラノ歌手としてボリショイ劇場に君臨。世界的な名声をえつつ活躍を続けた時代まで。
第二の人生は1974年、夫のロストロポーヴィチと共に西側に亡命してから、一昨日、その激動の人生を終えるまで。

第一の人生は輝かしいものでした。戦時中に少女時代を送ったガリーナは、レニングラード封鎖を経験するなど大変に困難な時代を送ったようですが、戦後ソプラノ歌手として活動を始めるや、たちまちのうちに実力を発揮。その美声と音楽性で1952年にはモスクワのボリショイ劇場に入り首席ソリストとして活躍を始めます。
現在は音楽ジャーナリズム的にはロシア第一の劇場の地位をマリインスキー劇場に奪われがちですが、壁崩壊まではボリショイこそがロシア/ソ連を代表する劇場であり、ボリショイのトップ・スター=ソ連最高の歌い手の証でした。

この時代のヴィシネフスカヤの活躍を示すものとしては、もちろんロシア・オペラのレコーディングがあります。言うまでもなくボリショイのスタッフとのチャイコフスキーの「エフゲニ・オネーギン」が代表です。また私は聞いたことありませんが、リムスキー=コルサコフの「雪娘」もカタログに残っているようです。あと西側に移ってからの録音になりますが、ロストロポーヴィチ指揮の「スペードの女王」もこの系統にはいります。またショスタコーヴィチの「ムゼンスクのマクベス夫人」の改訂版「カテリーナ・イズマイロヴァ」は映像で残されています。(オリジナル版の「ムゼンスクのマクベス夫人」としては後にロストロポーヴィチと録音しています。)
そしてピアノも達者だったロストロポーヴィチの伴奏で歌ったロシア歌曲の数々も忘れてはなりません。特にムソルグスキー。

もう一つ忘れてならないのはイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンの「戦争レクイエム」の録音です。1962年に初演されたこの作品は3人の独唱者に、第二次世界大戦で戦った三つの国、イギリス、ドイツ、ソ連を代表する3人の名歌手、すなわちテノールのピーター・ピアーズ(イギリス)、バリトンのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(ドイツ)、そしてソプラノのガリーナ・ヴィシネフスカヤ(ソ連)の3人を予定して作曲されました。
しかし1962年5月の英国コヴェントリーにおける初演の直前、ヴィシネフスカヤはソ連当局の出国停止命令により、イギリスに渡れなくなってしまいます。初演は急遽ヒザー・ハーパーを代理に立てて行われました。(ちなみに夫のロストロポーヴィチが急病になったためというのも渡英できなくなった理由なのですが、これはちょっと疑わしいような気がします。)
ヴィシネフスカヤは翌63年1月にロンドンで行われたレコーディングには参加できたのですが、思えばこの一件こそ彼女の第二の人生を暗示するものだったのかもしれません。

1955年にヴィシネフスカヤはソ連が生んだ世界最高のチェリストの一人、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチと結婚します(二度目の結婚)。ロストロポーヴィチは数々のコンクールの優勝歴、二度のスターリン賞とレーニン賞の受賞、ソ連邦人民芸術家の称号など、ソ連の音楽家としてあらゆる栄誉を得た大スターでした。また指揮者、ピアニストとしても活躍するエネルギッシュでマルチな才能の持ち主でもありました。

と同時にロストロポーヴィチは言論の自由を守るための活動を積極的に行うようにもなります。特に反体制作家ソルジェニツィンに別荘を提供し4年間かくまったことは後に有名になりました。1970年、ロストロポーヴィチはソルジェニツィンを擁護したことで、ソ連当局から反体制の烙印を押され演奏活動を停止させられます。そして74年、ロストロポーヴィチは妻のヴィシネフスカヤと共に西側に亡命することになります。78年にはソ連国籍剥奪。1990年、ゴルバチョフによって国籍を回復するまで、二人は16年にわたって故郷を追われた亡命者の生活を送ることになるのでした。

ヴィシネフスカヤはなぜ夫に従ったのでしょうか?別の道だってあり得たのに。――ということで、御用とお急ぎでない方は昔書いた「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」の記事などお読みいただければ幸いです。何かの参考になるかどうかは判りませんが。

亡命時代の録音としては上に書いた「スペードの女王」の他、代表的なものにロストロポーヴィチ指揮によるショスタコーヴィチの交響曲第14番「死者の歌」。そしてムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」があります。これはアンジェイ・ズラウスキー監督によるオペラ映画のサウンド・トラックなのですが、かなりの曲者監督で、オペラ映画と言ってもゼフィレッリのような正統派とは全く違いますから、ご覧になる場合は覚悟が必要です。――といっても現在CDもビデオもカタログには載って無いようですが。なおタイトルロールのライモンディは自身で演じていますが、マリーナ役を歌うヴィシネフスカヤは声のみで演技の方は女優が演っています。

ヴィシネフスカヤはイタリア・オペラも得意にしていて、DGにはロストロポーヴィチ指揮で「トスカ」の全曲録音もあります。私は大昔、FM放送で部分的に聞きましたが、演奏全体もヴィシネフスカヤの歌唱も私の好みからは離れた方向でちょっと駄目でした。でもその後聞き直してないので、今聞いたらどうか判りませんけども。

二人の偉大な歌手のご冥福をお祈りいたします。

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2012年12月12日 (水)

デラ・カーザ、ヴィシネフスカヤ死去(前)

20121212_ldc またまた大物アーティストの死です。コメント欄で助六さんから教えていただきましたが、ソプラノ歌手のリーザ・デラ・カーザが10日、ガリーナ・ヴィシネフスカヤが11日に亡くなりました。デラ・カーザは93歳、ヴィシネフスカヤは86歳、もちろん二人とも歌手としては現役ではありませんでしたが、言い知れぬ悲しみをおぼえます。

その二人だけでもショックなのに、なんとラヴィ・シャンカールまで亡くなったそうです。私はインド音楽はほとんど聞かないので、シャンカールの音楽についても詳しくは無いのですが、プレヴィンやメータと共演したシタール協奏曲は覚えています。ビートルズのジョージ・ハリソンとの関係も有名でした。ご冥福をお祈りいたします。

リーザ・デラ・カーザは、1919年スイス生まれ。父親はイタリア系のスイス人で(今気づきましたがDella Casa って、そういえばイタリア名ですね)母親はバイエルンの人。両親の出自を考えれば、デビューが蝶々夫人だったのも、ミュンヘンでの「アラベラ」が彼女の最高のパフォーマンスの一つとされてるのも、共になるほどと思えます。

彼女はイタリア・オペラもワーグナーも歌いましたが、なんと言っても本領を発揮したのはモーツァルトとR・シュトラウスでした。
なかでもエーリヒ・クライバーとの「フィガロの結婚」の伯爵夫人や、ベームの一番古い録音の「コジ・ファン・トゥッテ」のフィオルディリージ、そしてフルトヴェングラーの映画版「ドン・ジョヴァンニ」ドンナ・エルヴィーラなどは名盤・名演として知られています。

ただ、ヨーロッパではデラ・カーザは美貌と美声を兼ね備えた名ソプラノとして現役時代には大変な人気を誇ったそうですが、レコードでしか知ることの出来なかった当時の日本では、どうしてもレパートリーが完全に重なるシュヴァルツコップの影に隠れた感があります。
上に上げた3つの名盤も、「ドン・ジョヴァンニ」はビデオが普及するまで音楽ファンは入手できませんでしたし、「フィガロ」「コジ」もLP時代後期には存在感が薄くなり、ジュリーニ盤やベームの二度目の録音などが決定盤扱いされるようになりました。

しかしCD時代になって、幾つかの重要なライヴ録音が発売されるようになり、またLP時代は入手し難かった古い録音なども簡単に手に入るようになって、むしろ日本のオペラファンの間では現役時代より存在感が増しているのではないかという気もします。(彼女は1974年に引退してるので、私も現役時代を知ってるとはとても言えないのですが。)

実際今聴いてみると特にモーツァルトなどでは、シュヴァルツコップの微に入り細を穿った歌唱よりも、デラ・カーザの素直で上品な歌い方のほうが旋律の美しさをよりあらわし得ていて、好ましく思えます。

引退後に発売されたライヴCDの中で最も重要なものといえば、おそらく1960年のザルツブルク音楽祭におけるカラヤンの「薔薇の騎士」でしょうか。(――「おそらく」というのは私自身は「薔薇の騎士」という作品が苦手なので、このCDも聞いてないのです。)このザルツの「薔薇の騎士」はシュヴァルツコップで映画撮影が行われたため、シュヴァルツコップの印象が強いのですが、表キャストはデラ・カーザだったのでした。映画も本来はデラ・カーザで撮影される予定だったのだそうで、主役変更の裏には色々とあったようです。

当時はマルシャリン役としても人気を二分していたとされる二人に、この映画(とカラヤンのレコード)のお陰で後世の評価に決定的な差がついたのはデラ・カーザにとっての不幸というしかありません。

それでもまあ、マルシャリン役に関しては多少の毒が必要だし、ライヴァルの方を高く評価する人のほうが多いのかなとも思いますが、リーザ・デラ・カーザが絶対的な評価をえたのは、シュトラウスの「アラベラ」のタイトルロールでした。彼女の「アラベラ」はカイルベルト指揮の録音が昔から決定盤でしたし、同じ指揮者のウィーン・ライヴやショルティ指揮のデッカ盤など4種類も出ているようです。

そしてこれはフィッシャー=ディースカウが亡くなった時にコメント欄でpfaelzerweinさんに教えていただき、お悔み中だというのに思わず狂喜してしまったのですが、なんと全曲の映像も残されています。なぜ彼女が理想的なアラベラ歌い、天性のアラベラ歌手と呼ばれたのかは、この映像をみると完璧に理解できると思います(まあ、音だけ聞いても明らかですが)。フィッシャー=ディースカウはヴィジュアル的にはちょっと違うかなという感じがするのですが、もちろん歌は最高です。
クリックでYouTubeに

彼女の後も「アラベラ」の録音はいくつか出ましたが、声と歌の点で匹敵するのはせいぜいショルティの映像版でのヤノヴィッツぐらいでしょうか。もちろんビジュアル的にはデラ・カーザの敵ではありません。
(遅くなったのでヴィシネフスカヤについては明日に回します)

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2012年12月 9日 (日)

街、モノクロームに

20121209_1 きょうの宮城県地方は強い冬型の気圧配置となり、西部を中心に雪となりました。仙台でもこの冬はじめての積雪。――まあ積雪と言ってもニュースによれば午前11時現在で1センチとのことですから大したことはありません。(ただし私の家は山の上にあるので、2~3センチ積もっています。)

一日中寒かったので、街路樹や屋根の上の雪は全然融けていません。つい先日まで紅葉が鮮やかだったのに、すっかりモノクロームの街に。

201212092 寒さは明日にかけて続き、朝の最低気温はなんと氷点下2度だとか…うぅぅぅ…

2枚目の写真は与兵衛沼の白鳥。やはり紅葉よりは雪景色のほうが似合いますね。

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2012年12月 7日 (金)

M7.3、アウターライズ地震でした

201212071 夕方の地震、宮城県北部と南部は震度5弱、仙台市は震度4でしたが、関東も結構強かったようですし、驚かれた方が多かったのではないかと思います。

私は地震発生時はたまたま免震ビルにいて、免震構造の建物での強い揺れというものをはじめて体験しました。ゆ~らゆ~らと、強いのか弱いのか判らない不思議な揺れですね。

JRの在来線は一時全面ストップ。おまけに東北線の仙台以北の一部区間では電車が線路上に立ち往生したため、長時間にわたって踏切の遮断機が降り続けるというハプニングがありました。しかし地震慣れした仙台市民、みな踏切は迂回してたのかさほど渋滞は起きなかったようです。

震源は三陸沖ですが海溝の外側で、いわゆる「アウターライズ地震」だったようです。

三陸沖を震源とする最大震度5弱の地震発生を受けて、気象庁は7日夜記者会見し、今回の地震について、東日本大震災の余震で、海溝の外側が震源となる「アウターライズ地震」との見解を示した。今後、最大震度4程度の余震が発生する可能性があるとして、警戒を呼びかけた。
 アウターライズ地震は、震源が浅く、比較的小さな揺れでも津波が発生する可能性が高いとされている。

(日本経済新聞)

で、震災直後の余震を除いてプレート境界の沖合でM7以上の余震が発生するのは初めてなのだそうです。

さて、アウターライズ地震とその危険性については311の後、さんざん聞かされたと思いますが、ここでもう一度復習しておきましょう。
Wikipediaから――   

海洋プレートが陸地側に潜り込んだ歪みを解消するため陸地側プレートが反発した時に、プレート境界型地震が起こる。歪みはこれから沈み込む海洋プレート側(海溝よりも更に沖側)にもたまっており、海底が隆起している場合がある(アウターライズ・海溝上縁隆起帯)。この歪みはプレート境界型地震の発生によって解消されるとは限らず、プレート境界型地震の前後などに、解消されなかった歪みによってずれや割れが生じ、地震を発生させることがある。アウターライズ(海溝上縁隆起帯)で発生するため、主にアウターライズ地震と呼称される(なお、こちらもスラブ内地震とする場合がある)。
    一般に反り返った先のもっとも高い(浅い)場所が張力を受けて破壊される正断層型の地震が多い。これとは逆に震源が深い場合は圧力が働き逆断層型となる。遠方の海域で発生するため、陸地において地震の揺れそのものによる被害は少ないことがほとんどであるが、1933年3月の昭和三陸地震や2007年1月の千島列島沖の地震のようにM8を超える地震がしばしば発生し、海溝型地震に匹敵する津波災害を引き起こすことがある。このため、津波地震と同様に地震発生直後の避難が遅れて被害が拡大する恐れがある。また、大きなプレート境界型地震の後に発生する場合もあることから警戒を要するものである。

今回は震源の深さ10キロということなので、正断層型ですね、きっと。津波は石巻市鮎川港で1mが観測されたそうです。正断層型のアウターライズ地震は1933年の昭和三陸地震がこの形で、非常に大きな被害が出たというのはご存知だろうと思います。

今後もしばしば311の余震としてのアウターライズ地震は発生するんだろうと思いますが、Wikiにも書いてあるように、揺れが小さいのに大きな津波が発生する可能性があるため、逃げ遅れなどが心配されます。今の時期は311の記憶が生々しいので大丈夫でしょうけど。

7気象庁の永井章地震津波監視課長は記者会見で、東日本大震災の巨大地震(M9.0)の余震の一つであり、懸念された「アウターライズ型地震」の一種との見方を示した。
 その上で「もう少し規模の大きい(M8級の)地震が心配されていたが、その中では小さい方だった。今回の震源の北や南でさらに大きいアウターライズ型地震が起きる可能性が残る」と注意を呼び掛けた。
 (中略)永井課長は、東日本大震災の巨大地震の余震活動は今回のアウターライズ型地震に限らず、まだ収まっていないと指摘。「今後も津波を伴う震度5前後の余震に注意してほしい」と述べた。 

(時事通信)

うー、十分承知してはいるんだけど、厳しいですね。

※ 画像は与兵衛沼。記事内容とは関係ありません。

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