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2013年5月23日 (木)

アンリ・デュティユー、ジョルジュ・ムスタキ逝く

Dutilleux_2008_cardiff アンリ・デュティユー氏(フランスの音楽家)22日、パリで死去。97歳。家族が明らかにした。死因などは不明。
フランス西部アンジェ生まれ。パリ国立音楽院で学び、パリ・オペラ座の合唱指揮者やパリ国立音楽院教授などを務めた。作風は「前衛の古典」と形容され、代表作は「メタボール」、小澤征爾氏の委嘱により作曲した「時間の影」など。1994年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した。

(日経新聞)

昨年エリオット・カーター死去の時にも、コメント欄で話題が出ましたが、作曲家のアンリ・デュティユーが亡くなってしまいました。なんと言えばいいものか…

私がはじめてデュティユーの作品を聞いたのは、ロストロポーヴィチがチェロ協奏曲「遥かなる遠い国」 のレコードを出した時で、たぶん70年代の中頃でしょう。調べると作品自体は1970年作曲ですが、録音は1974年のようなので。それまで知らなかった作曲家の曲がロストロ氏のような大物の演奏で、しかもEMIのようなメイジャー・レーベルから出たので、「この人はいったい誰なんだろう?」と興味を持ったことが思い出されます。その頃はデュティーユと表記されていました。

97歳だし特に好きな作曲家ということではないんですが、でもやはりショックは大きいです。本当にブーレーズが最長老になる日が来るなんて…

20130523moustaki ノーマン・レブレヒトがデュティユーの死去のニュースにどんなコメントを寄せてるか読もうと思って、彼のサイトを開いたら、さらにショックなニュースが・・・

ジョルジュ・ムスタキが今日ニースで亡くなったそうです。79歳でした。

ちょっと前のニュースになりますが、レイ・ハリーハウゼンが亡くなりました。92歳だったそうです。
映画の特殊撮影、特にミニチュアの人形を少しずつ動かし1コマ1コマ撮影していくストップモーション・アニメの技法を確立した人です。

皆様のご冥福をお祈りいたします。

※ デュティユーの写真はWikipediaから。ムスタキの写真は同フランス語版からです。

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コメント

ジョルジュ・ムスタキは、デュティユーよりも不思議にも身近な感じがします。後者の音楽や人柄がその大柄さに拘わらずなぜか実体感が薄いのと反比例しているようです。ムスタキは一時は日本でもフランスを代表するパーソナリティーだったような気がしますが、どうでしょう。特にピアフなどを知るようになると無視できなくなりました。

投稿: pfaelzerwein | 2013年5月24日 (金) 05:06

pfaelzerweinさん

もうずいぶん長いことムスタキの歌は聴いてませんでしたが、本当に残念です。私にとってもムスタキはデュティユーよりも身近です。
ただ私はピアフなどのシャンソンは殆ど聞かないので、ムスタキもあまりシャンソンとのつながりで聞いたことがないんです。

私たちの世代にとってのムスタキはプロテスト・ソングを歌う地中海風味のシンガー・ソングライターでした。
地中海風味というとナナ・ムスクーリにも同じテイストを感じましたが、これはムスタキ、ムスクーリと、いかにもギリシャ人といった名前で先入観をいだいただけかもしれません。

投稿: TARO | 2013年5月25日 (土) 09:08

サン・ルイ島は2日のうちに島に品格を与えていた住人を2人とも失ってしまったわけですね。
2人とも姿を見かける機会が多かったので、ある種の親しみがあります。

ムスタキは10数年くらい前までは正に今頃、季節のよい5-6月の夕刻にセーヌ河畔をぶらぶら散歩する姿がよく見られたものでしたが、最近は見なくなったと思っていました。
まあ今年の5月は雨と寒さばかりで散歩日和どこではありませんでしたが。
不治の呼吸器疾患で09年初めに引退を決め、最近はニースで療養中だったことは今回知りました。

以前コメントさせて頂いたことがあったように思いますが、セーヌ河岸で合唱の練習をしていたとき、足を止めて聞いて拍手してくれたのが楽しい思い出です。ロシア語聖歌だったので多言語話者でコスモポリタンだった彼は興味を引かれたのかも知れません。

ムスタキはエジプトのアレクサンドリア生れのギリシャ系ユダヤ人で、生まれながらのフランス人ではないですよね。もちろん仏国籍は取ってましたが、仏に来たのは17歳のとき。
祖父はGiuseppe Mustacchiというイスタンブール生れのギリシャ人で、コルフ出身家系だったためイタリア風名前だったそうです。

19世紀後半から綿花搬出で栄えたアレクサンドリアは多数の英・ギリシャ・墺・仏・伊住民を抱え、商人間のコミュニケーション言語は仏語が優勢、1920年代の行政府の使用言語はトルコ・伊・仏語、アラビア語を話せない王族さえいたそうです。
神聖ローマ皇帝カール5世はブルゴーニュ公家系で母語は仏語、一生まともに独語を話せなかったというし、現代でもウクライナのクチマ前大統領は母語はロシア語でウクライナ語が苦手だったのがハンディだったとか欧州の言語事情は面白いです。

それでムスタキの出世時の本名はYoussef Mustacchi。
何でも両親はJosephと命名しイタリア人助産婦は役所にGiuseppeと届け、戸籍帳簿には役人がエジプト式にYoussefと記帳したとか。

両親同士はギリシャ語を話していたそうですが、家庭内での言語は伊語で(失語症だったジョルジュの叔母が隣人との会話で突然伊語だけ話すようになったという信じ難い理由で)、ムスタキの母語は伊語だそうです。エジプトのエリート家庭は子弟を英語か仏語の学校に送ることが多く、書店主の息子だったムスタキと姉妹は仏語学校に行ったそう。
ムスタキは家では伊語、学校では仏語、街ではアラビア語を話し、ギリシャ語は堪能ではなかったそうです。

ムスクーリは「子供の頃分からないまま英語や仏語の歌詞を真似して歌っていた」と言ってますから、勉強して習得した仏語みたいですね。

ムスタキの仏語は私にはほぼ完全にネイティヴのそれに聞こえるけれど、「う~ん、ちょっと、もしかしたら」と思わされる微妙さがあります。フランス人には「ベルギーかな?いや」といった感じの「XX訛り」と同定できない微小な訛りに聞こえるそうです。
彼は他に英・スペイン・ポルトガル・へブライ語もできるようですね。すさまじい。
ムスクーリも仏語はもの凄い流暢ですけど、外国人かなと思わせる僅かな訛りはありますね。


デュティユーは音楽家としては異例にとにかくコンサートでよく姿を目にする人でした。ごく一般的プロから現代まで。

パリでは頻繁に演奏されるので(ブーレーズは彼の作品を振ったことはなみたいですが)、私も特に好きではなくても色々聞くことになりましたが、この2月にプレイエルでラトルとベルリンがハンニガンのソロで「コレスポンダンス」をやるのを聴いて「ほんとにほんとに素晴らしい作曲家」と改めて思ったばかりでした。
ここ10数年は仏では偉くなりすぎて、「時間の影」への軒並み絶賛なんかに私はやや白け気味でもあったんですが。美しいし、不思議な奥深さがあって、音楽言語も鋭さにも欠けていないけれど、頭脳臭が皆無、センシティヴで退嬰性も折衷性も皆無の個性的音が無類でした。
ラトルとベルリンの演奏もその前にやった内田をソロに迎えたベト3よりはるかによかった。
ここ数年は姿を見掛けなくなったのが気になってましたが、その晩も会場にはいなかったようでした。今回遂に車椅子になってたことを知りました。

その他ではラジオをつけたら響いてきた弦楽四重奏「夜はこうして」の彼方から響いてくるような密かな美しさが耳に残っています。

ムスタキの飄々とした姿と、デュティユーの杖をつきながらも堂々とした確かな足取りが目に浮かびます。

投稿: 助六 | 2013年5月27日 (月) 09:53

助六さん

そうですか・・・助六さんにとっては、親しみをもっていた音楽家を相次いで失ったことになるのですね・・・

ムスタキのエピソードも、なんとも素敵です。

ムスタキの名前はイタリア系の語尾なんですか。私は「ブズーキ」とかのギリシャ系の語尾なんだろうと誤解してました。考えてみたらkiじゃなくてchiでしたね。

ヨーロッパにはポリリンガルというのかマルチリンガルというのか、すごい人がいますよね。学生時代、イタリア語の先生だったイタリア人は11ヶ国語を喋る人で(もちろん日本語はペラペラ)、なおかつモンゴル語を勉強中とか言ってました。

>何でも両親はJosephと命名しイタリア人助産婦は役所にGiuseppeと届け、戸籍帳簿には役人がエジプト式にYoussefと記帳したとか。

こういう話好きですね~。なぜか嬉しくなっちゃいます。
日本では絶対ありえないことですけど。

>失語症だったジョルジュの叔母が隣人との会話で突然伊語だけ話すようになったという信じ難い理由で

これもナイス。なぜかパゾリーニの「テオレマ」を思い出してしまいました。

>美しいし、不思議な奥深さがあって、音楽言語も鋭さにも欠けていないけれど、頭脳臭が皆無、センシティヴで退嬰性も折衷性も皆無の個性的音

デュティユーの音楽は本当に魅力がありますね。ましてやラトルBPOだったら最高だったでしょうね。

投稿: TARO | 2013年5月28日 (火) 10:23

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