東北の歴史・1~幻の前期旧石器時代(後)
捏造事件は必ずしも負の影響だけでなく、事件のおかげで正常化された部分というのもあります。
一つは石器が発見された地層の年代測定だけで、安易に何万年前の遺跡と結論付け大騒ぎするような軽薄さが払拭されたこと。
もうひとつは当時の考古学会で流行してた「地層は形式に優先する」だとか「理論考古学」だとかいう変な思想が駆逐されたことです。
後者は学問的な話なのでどうでもいいとして、前者は影響をうけている遺跡があります。
実は東北には前・中期旧石器の遺跡とみられ、かつ藤村さんとは無関係の遺跡がひとつあります。
それは岩手県遠野市の金取遺跡(かねどりいせき)という遺跡です。縄文から旧石器時代にまたがる複合遺跡で、1980年代の中頃から発掘が行われていました(当時は遠野市と合併する前で、宮守村)。そのうち1番下の地層が2003年になって、8~9万年前の地層だという研究結果が発表され、一躍注目を集めるようになっています。
私は行ったことがないのですが、多くの写真を掲載しているHPがありましたので、URLを貼っておきます。
http://www.jomon.com/~emisi/semi/14semi/kanedori/kanedori.htm
発見された石器はこちら。
http://www.tonotv.com/members/fukudokuhon/rekishi01_1.htm
全面的に賛同されているわけではなく、懐疑的な人もいます。それでいいと思います。あらゆる方面から、検討を重ね、日本列島で同時期の遺跡が数多く出現した段階で結論づけても遅くはないでしょう。
一方2009年には島根県出雲市の砂原遺跡で、12万年前とみられる地層から石器が発見されています。今のところ、国内最古の旧石器遺跡かもしれないということになっています。
ただこの砂原遺跡に関しても金取遺跡に関しても、取り扱いは非常に慎重です。地層の年代が確定したからといってかならずしも正しくその時代の遺跡であると結論づけられてはいないようです。繰り返しますがそれでいいと思います。地層の年代確定に関しても、311のような想像を絶するダイナミックな地球の動きを体験すると、詰めなければならない条件はどんどん広がってくるようにも思えます。
実際80年代の発表に関しては(捏造遺跡ではありながらも)、行政・研究者側の姿勢は非常に慎重でした。
私が初めて取材したのは83年の中峰遺跡でしたが、この時はたしか25万年前から30万年前の石器が発見されたという実に衝撃的な発表内容で、私も非常に驚きました。私はどなたか忘れたのですが、現地での発表の責任者に「30万年だったら原人の時代になってしまいますよね。それでいいんですか?」と聞いたら、「時代的にはそういうことにはなるんですが…」と言葉を濁し、『原人』などという言葉を使うことには躊躇いを感じていたようでした。それが90年代の発表になって、前期旧石器―原人―狂騒曲へと変化していったわけです。(結局それが捏造を見破るきっかけになったわけですから、なんとも皮肉な話ではありますが。)
従って姿勢としてはマスコミ的空騒ぎから本来の学問的な姿勢に戻ったとも言えますし、さらに結論を出すための過程にもより慎重さが求められるようになったとも言えるのでしょう。まあ、あまりにも虚しい事件ですから、ひとつぐらい良い影響もなければね。
(ついでながら産経新聞の砂原遺跡の見出しは「国内最古の旧石器を出雲で発見 12万年前、これまでより3倍古く」というもので、『3倍古い』という言い方がなんか可笑しくて笑ってしまいました。これまでが4万年前だから12万年だと3倍ということで、別に日本語として間違いではないんでしょうけど。)
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このように慎重で、かつ学問的に疑問の余地ない方法で研究が行われることによって、考古学の世界も信頼を回復できるかも知れません。多くの悲劇的な影響を及ぼした遺跡捏造事件も、いつか乗り越えられるのだろうと思います。
藤村さんの動機が何だったのかについては、永遠にわからないままです。共犯者がいる、あるいは彼は単なる実行犯に過ぎなかったという疑いも、結局はブラック・ボックスとなるのだろうと思います。
実は彼の指示ではないのかと一番疑いをかけられた岡村道雄さんは、一昨年「旧石器遺跡捏造事件」という本を上梓しました。全編にわたって学術報告書と行政の報告書のような文章が続くのですが、ときおり静かな怒りが噴き出しているようなところが見られ、角張さんの本の凄い説得力にもかかわらず、岡村さんの本を読むとこれはこれで「岡村さんも騙されたんだろうな」と思えてしまいます。
この本のクライマックスは事件後十年目にして初めて岡村さんが、名前も住処もかえ新たな人生を生きていた藤村新一さんを探し当てるところです。岡村さんはいくつもの質問を用意していったようなのですが、藤村さんは一部記憶をなくしていることもあり、あまり答えてはくれず、結局皆の知りたいことは何も判らなかったようです。
岡村さんは全く知らずに行ったようなのですが、藤村さんは精神病院に入院していた時期に、右手の指を斧で叩き切ってしまっていたのだそうです。「二度と悪さをしないように」と。
それを見た時とても強く追求することは出来なかったと、岡村さんは書いています。
もしそれが「二度と悪い奴らに利用されないように」だとしたら、岡村さんだってとても冷静に本なんか書く気にはならないでしょう。そう思うとやはり単独犯なんだろうなと思ってしまうのですが…
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ところで私は昔から不思議に思ってることがありました。馬鹿だと思われそうで、専門家には一度も聞いたことがないんですが、石って土中で沈んでいくことって無いんでしょうか?地球は物凄い速度で回転してるわけで、これが遠心分離機みたいな作用を及ぼすとかで…。やっぱり馬鹿げてるでしょうか?
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